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番外編 スパルタ授業の実態

ディラン先生目線の番外編です。

クロノス様よりアティお嬢様に武術の稽古をつけるように言われた。


そして同時に武術に関して諦めさせる様にも。


最初は意味が分からなかった。しかし事情を聞く処によるとアティお嬢様に泣き落とされたそうだ。

しかしアティお嬢様が万が一にも危ない目に合う事が不安で仕方ないのだそうだ。

それなら最初からきっぱりと断れば良いのにとも思ったが、これはクロノス様の頼み。無下にするわけにもいかない。

全く…、お嬢様たちの前では武王も形無しだ。


そんな事を頼まれ、どうしたら武術を諦めてくれるかを考えた結果、到底続けられないような授業を行う事とした。


授業開始時刻を少し回り、お嬢様がかなりのスピードで走って来た。

さて、お嬢様には悪いですが諦めて貰いましょうか…。


お嬢様には実際、リアンの事で恩があったりするのだが、クロノス様の命という事で自分を正当化する。


改まっての自己紹介を行い、厳しく行く旨を伝える。

この程度で諦めてくれるならこっちとしても助かるのだが、お嬢様の芯が強いのは周知の事実。この程度では折れてくれない。

「ではまず基礎となる体を作る為の走り込みです。」

とりあえず自分がやらされて嫌だった物をやらせる。

お嬢様に嫌そうな顔が浮かぶ。

「そこ!嫌そうな顔をしない!嫌ならこれ以上教える事はありません!」

お嬢様に嫌な思いをさせるのは本意じゃない。

だからもうここらで折れて欲しかった。

「…分かりました。」

「では屋敷の周りを走って来て下さい。」

「何周ですか?」

困ったな。具体的にはお嬢様が諦めるまでなのだが、そんな事を言える筈もなく。

「さっさと行く!」

無理矢理話を断ち切る事とした。

「は、はいっ!」

少し酷かもしれないが引いてはお嬢様の為。

本当に、本当にごめんなさいアティお嬢様…!


そしてお嬢様は、走りつづけた。

何周も何周も。ペースは落ちつつあるものの100を超えた辺りから、止めようか止めまいか葛藤が続いた。


130に差し掛かった辺りでお嬢様の姿が見えなくなった。

良かった。きっと諦めて何処かで休憩なさっているのだろう。


屋敷の裏手に周り、その光景に唖然とする。


「お嬢様っ!?」

ゼッゼッと浅い呼吸を繰り返し横たわっていた。。

これはまずい。

急いで屋敷の中へと運び込む。

そして屋敷は一時騒然となった。


「申し訳ありません!クロノス様!私の管理不足です!」

「気にするな。お前が気に病む事ではない。命に別状は無いそうだ。あの娘には悪いが、これで諦めてくれるだろう。お前は私の命令を聞いただけなのだ。責任は私にある。」

そうは言われても自分の気持ちは浮かない。

「…はい、失礼しました。」

本当にこれで良かったのだろうか…?




次の日、憂鬱とした気持ちで部屋に居たところにノックが響く。

俺は目を見張った。

扉を開けるとそこにはアティお嬢様がいた。

「昨日はご迷惑をおかけしました。私は大丈夫ですから、今日の授業を始めましょう?」

不意に熱い物が目の奥より込み上げてくる。

「お嬢様!昨日は本当にすみませんでした!!」

大の大人がみっともないところを見せてる自覚はある。しかし抑えが効かない。

「え?えぇっ!?お願いですから泣かないで下さい!」


その後結局お嬢様に慰められた。




そしてその夜。

「クロノス様。アティお嬢様の件でお話があります。」

「…何だ?」

「お嬢様に武術を続けさせて下さいませんか?いえ、私に武術を教えさせて下さい!」

流石にこの発言は予想外だったのだろうか?驚いた様子だ。

しかしすぐに厳しい表情になる。

「責任は取れるのか?」

重くのしかかるその言葉。

「万が一の時には私の首を差し出しましょう!ですからお嬢様の意志を汲んであげて下さい!」

それは俺の決意の言葉。

一瞬時が止まった様にも思えた、凍りつく空気。そして…。

「クククッ!ハハハッ!面白い!まさかお前の方が説得されるとはな!面白い!流石我が娘だ!よし、良いだろう!ただしやるからには徹底的にやれよ?」

それはお嬢様にそして俺に向けられた期待の言葉。

「はいっ!お任せ下さい!」

クロノス様の期待、お嬢様の心意気。これらを決して無駄にはしまい、そんな決意をその日固めた。


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