14-5天界での遭遇とここ最近
「浮影さん!?ご無事でしたか!!」
天界に入るや否や天使が駆け寄って来た。
「あぁ、とりあえず大丈夫。何か朝うなされてたらしいけど、特に異常無し。」
「良かったです…。」
力が抜け、ヘタッとなる天使。
「そんな心配だったの?」
「当然ですよ。まさか『アレ』がいくらなんでも手加減抜きで攻撃するとは思いませんでしたし、浮影さんの姿が無くなったんですから。」
そりゃ、悪い事したな…。
そしてふと思いついた。
「なぁ…?もしかしてまた俺の神力って増えちゃってたりすんの?」
もしかしてまた吸収しちゃった?
「…もしかしたら。ちょっと待って下さいね。」
そういうと天使は中空で何かを操作し始めた。
そういえばいつか言ってたな。
天使からは俺が想像して出した物は見えないって。つまりはその逆なのだろう。
そして天使が俺には見えない何かの操作を終えた。
「残念ながら増えちゃってますね…。一割増し程ですけど。」
ホントになんて事してくれたんだ。『アレ』は…。
「しかし、不思議な体質ですね…。本当なら魂というか存在が丸々消え去っちゃっても不思議じゃない筈なのに…。」
「じゃあ何で俺にそんなのを襲わせたんだよ…。」
「いや、その。そこまで『アレ』がキレるとも浮影さんが止まるとも思えませんでしたし…。」
それは尤もであり、言い返せない。
「とにかく無事で良かったです。あ、あと出来れば『アレ』を責めないであげてくれませんか?」
「いや、割と今回はこっちにも非があるから責めないけどさ、どして?」
「浮影さん、天界で『アレ』を見たのって初めてですよね?」
「確かそうだな。」
「『アレ』も『アレ』なりに色んな世界で頑張っているんです。ですからこの度のうちの上司のご無礼には何卒目をつぶって頂けないでしょうか?」
それは『アレ』の部下としての天使の言葉だった。正面から謝られて、許さないなんて言える程俺は人で無しでは無い。
「『アレ』の成果と被害が実はどっこいどっこいだったりするんですけどね。」
そこも含めて目をつぶっておくとしよう…。
「そういえば今更ですが今日はどのようなご用事で?」
「あー、ゴメン…。特に用事は無いわ…。強いて言うなら眠れなかったから暇潰しに来た。」
「あ、じゃあ私の愚痴聞いてくれませんか?」
何でわざわざ天界来て愚痴を聞かなきゃならんのだとか思いかけたが、いつも世話になってるし、今日くらいは良いかなと考え、承諾した。
その結果天使の愚痴は一晩中を通り越し、寝坊ギリギリまで続いた。
というか無理矢理切り上げた。そうしなければいつまでも続いた事だろう。
『アレ』にしても天使にしても苦労してんだな、という事がヒシヒシと伝わってきた日だった。