13-5六色の魔法と新担任
「ルナ!?大丈夫!?」
全くもって油断していた。慌ててルナに近付く。
「はい、お姉様。いきなり水晶が割れて、驚かされましたが大丈夫です。」
とりあえずホッとした。破片でどこか切った様子も無い。
「えーと…、一体これは何ですか…?」
アルマ先生に現状説明を求める。
原因究明は簡単だ。
ルナが水晶に触れたから。
ただそれだけの筈なのだ。
「…私も実物は初めて見ました。ルナシアさんは希少属性の使い手かもしれません。」
希少属性…?これは初めて聞く単語だ。
「希少属性?何ですかそれは?」
ルナも初めて聞くようだ。
「はい、発現者はおよそ万人に一人と言われる程の、基本の五属性とは全く異なる位置付けの属性です。」
物事には例外がある。俺の複合属性しかり、そしてルナの希少属性は更なる例外的な特性を秘めているようだ。
「しかも判定玉が割れる程です。余程強い属性かもしれません。扱いには気をつけた方が良いでしょう。」
あー…、何て言うか自信無くしてきた…。
くじ引きで二等当てて喜んでる目の前で特賞を当てられた気分だ。
とは言えこんな可愛い女の子に本気で嫉妬を抱く程子供じゃないし、俺の大事な妹なのだ。前世を含めるとどちらかと言えば姪とかそんな感覚ではあるけど。
しかしこれが公爵家クオリティーというものなのだろうか?
兄妹揃って何らかの才能が飛び抜けている。
何かそう考えていると神力を抜きとして五十人に一人程度の自分がとてもしょぼい様に思えてきた。十分凄い筈なのに…。
部屋に戻り手の平を見つめ考えに耽る。
氷…か…。
出来そうな事をあれやこれやと考えてみる。
想像は膨らむがそれ以前に基本となる無の魔法すら使えないという現実に些か落ち込む。
それに加えこっちの世界での神力の糸口も掴めていない。
この現状は下手すると俺が考えている以上にまずいかもしれない。
俺はまだほんの少し認められないが現在女なのである。つまり武術の心得は必要は無い(それでも今後に備え近いうちに習う予定だが)。
しかし魔法はどうだろうか?これは男女の差が少なく、世間一般的に評価される内容なのだ。
勉学、マナーは現状ギリセーフとして、今のままであれば落ちこぼれの烙印が押されるのも時間の問題かもしれない。
公爵家の顔に泥を塗る訳にはいかない。少なくともこの家族はそんな事を微塵も気にはしないだろうけど、きっと俺にはその心遣いが酷く痛い。
ここでふと思った。
…もしかしたら十年も一緒に生活してきて俺はまだどこかこの家族と壁を作っているのかもしれないという事に気付いた。
…寝よう。
自分の非才(とは言っても周囲が異常なのだが)と家族との自らが作り出した壁を意識した日だった。