12‐5止まらない好奇心
「この娘たちを警備に突き出すんなら、その前にオッサンを警備に突き出すぜ?」
「次から次に、何で俺が捕まんなきゃなんねーんだよ!?」
尚更イケメソさんが何者か分からなくなった。
…まさか、俺達の正体を知っている?
「んじゃー、これが目に入らぬか〜、ってか?」
黄門様よろしく取り出した物は
「こ、公爵家の家紋!?」
な…?これには俺とルナも目を見張る。
とりあえずオッサンは慌てて逃げて行った。当然だ、公爵家が一般市民を叩き潰すとも思えないが、正面から立ち向かう様な相手ではない。
「助けていただきありがとうございました。ろくなお礼もございませんが…。」
「良いんですよ、お礼なんて。それよりこれからは気をつけて下さいね?」
ルナが遠慮がちに言う。
俺に至っては見て見ぬふりを決めようとしたしな…。改めて考えると自分が恥ずかしい。
そうして少女も去って行く。
んで、問題はコイツだ。
「…そして貴方は何者なんですか?」
イケメソさんを睨む。
公爵家の家紋という事は関係者だし、ただ者では無い。そして俺はコイツを見たことが無い。
「何者か、ですか…。ふぅ…、言って良いものか…。」
「答えて下さい。」
「はいはい、分かりました。せっかく可愛らしいんですからそんな顔で睨まないで下さい。」
微妙に照れる。しかし出来る限り顔には出さずに一応まだ睨んでおく。しかし尻尾は少しソワソワした様子だったらしいけど。
「えーっと、私はクロノス様より言われてお嬢様方の監視を頼まれている、ゴスパ・トルーシャと申します。」
監視係か…。いそうだとは思ってたけど…。
「監視ですか…。何時から見ていたんです?」
「何時からというより四六時中見ています。」
「変態。」
「ストーカー。」
俺やルナから侮蔑の言葉が発せられる。
「いやいや!ちょっと待って下さい。出来る限り入浴中とお手洗いの際は避けてますから。」
出来る限りって何だよ…。
「じゃあ、ストーキングしてて何故屋敷から出るタイミングで止めなかったんです?」
「クロノス様よりお嬢様方の行動を無理に止めるなと申し付けられてましてね。危険を感じたらすぐに止めますけど。あとストーキングじゃありません。立派なお仕事です。」
ふぅん…。
「では、私の素性も分かったところで帰りましょう?怖い思いをして少しは懲りたでしょう?」
懲りては無いけど良い頃合いかな?
「はい、分かりました。」
こうしてストーカーもとい、ゴスパさんと屋敷に戻った。
「…ふぅん。公爵家のお嬢様ね…。フフッ、面白いかもしれないわね。」
その視線に俺達は全く気づかないのであった。