番外編 尻尾の問題
以前ケモノっ娘要素が少ないと言われ、書いてみました。満足いくかは別として。
「お姉様って結構分かりやすいですよね。」
そんな事をルナより言われたのは、夏の帰省でアレス兄、メル兄が帰ってきて、兄妹4人で久しぶりにお茶を楽しんでいた時だった。
「あっ、分かるかも〜。アティ程じゃないけど兄様もね〜?」
メル兄からも言われる。一体何の事だ?
「どういう事だ?」
アレス兄も意味が分からない様で問い掛ける。
「感情が出やすいって事ですよ。」
俺ってそんな感情的だったか…?
「そうそう、特に尻尾とか見てれば一目瞭然だよね〜?」
尻尾?訳が分からなかった。
「尻尾…か?」
俺やアレス兄といった獣人達から生えている耳などと共に動物的特徴を示す尻尾。
アレス兄も自覚は無い様で不思議そうにしている。
「はい、尻尾を見てると目や口以上に物を語ってますよ?」
意識した事は無かったが…。
「例えばどんな風にですか?」
「例えば嬉しそうな時はブンブンと横に振られてたり、悲しいと尻尾もシュンとしていたり…。」
うわ…。まんま犬や猫じゃん…。
「ちなみに今はどんな感じでしょうか…?」
何か怖い。
「う〜ん、そうだね〜。尻尾がくねくね動いてて、今まで気にしていなかった事を気にし始めた感じかな〜?」
ほぼ的中だ…。何か怖い…。
部屋に戻り、少しばかり悩んでいた。
勿論、今日指摘された尻尾の事だ。
感情が駄々漏れな付属品を忌ま忌ましげに睨む。
何か困るという訳では無いが相手に筒抜けというのは良い気分がしない物だ。
一応身体の一部という事もあり、意識すれば動きを制御出来なくは無い。
しかし四六時中意識を傾けるのは気が滅入るという物なのだ。例えるなら一日中意識して呼吸をする人間がいないといった所か?
便利な面も多分無くは無い。
例えば猫とかがそうなように、バランスを取る。同じ猫科の虎にも出来る筈だ。憶測なのは、はしたないとか言われて、わざわざそんな狭い場所を通らないからだ。
というか多分今更尻尾が無くなれば重心が変わってしまうだろう。
尻尾にだって感覚はあり、正に切っても切り離せない物だ。
総じて悩んでも解決しない問題なのだ。
尻尾の話から二週間が経とうとしていた。
アレス兄達がもう学院に戻らなければいけないのだそうだ。
「じゃ、今度は冬だな。」
「う〜ん、またアティとルナと離れ離れか〜…。」
はぁ…。早かったな…。
短い物だ…。
「ほ〜ら、アティ。そんな悲しまないの。」
「べ、別に悲しんでいません!」
「そ〜?じゃあそのうなだれた尻尾は何〜?」
ハッと尻尾を見ると自分の気持ちを代弁する様に元気の無い付属品。
「悲しんでくれないならもうしばらく帰って来ないかな〜?」
更に下がって行く尻尾。
「メル兄様の馬鹿っ!」
「ゴメンゴメン、嘘だよ。大丈夫、冬になったら真っ先に帰ってくるよ。」
尻尾が上がって行くのが分かる。
「メルはそれで一日早く間違えたもんな?」
「ちょ、兄様!それ言わないで〜!」
「「ふふふっ!」」
「アティもルナも笑わないでよ〜?」
「お、アティも少しは元気になったみたいだな。」
気がつくとその時の尻尾は元気良く横に振られていた。
こうして俺は自分の素直な気持ちを伝えてくれるこの尻尾が少し好きになった。
作者的にオチが微妙かな…?




