番外編 因縁の再会?
メルキウス君視点です。
中央学院の入学式が一週間後に迫っている。
今日にだってこの家を旅立たなければいけない。しかし二つの事が未だに僕を悩ませていた。
一つは僕の部屋。お世辞にも綺麗とは言えない部屋だ。この雑多とした部屋の中から持って行く物を選別しなければならない。
出来れば全て持って行きたい所なんだけど寮の部屋は今より狭く相部屋らしい。
全く…狭っ苦しいのは嫌だな〜…。
しかし、二つ目の問題が部屋の物を全て投げ捨てたって良いくらいに僕を悩ませていた。
向こうに行ったら、向こうに行ったら…。
アティやルナに毎日会えないじゃないか!!
無人島に一つ何かを持って行くとしたら?という質問をされたならば、
妹一択。
即答だろう。
中途半端な物を持って行くより妹を愛でて死にたい。
しかし別れとは常に当然で突然な物だ。
仕方ないので妹達との向こうでの感動的な別れをいつまでも胸に取っておくしか無いだろう。
どうしても割り切れない気持ちが渦巻き、僕を留まらせていた。
「もうすぐさ、入学式なんだ。アティとルナも来るよね〜?」
「え?嫌ですよ。」
「お姉様が行かないなら私もそんな気が乗りませんね…。」
あっさりと否定された。
そして頬を伝う雫。
「えっ!?ちょ!?メル兄様!?泣かないで下さい!!」
「何で見送りに来てくれないの〜…?」
「え、いやその…。王都に行くとあの王子が煩そうですし…。」
沸々と怒りが沸き起こる。…許すまじ、アラン王子。
妹に近づくのみならず感動の別れまで奪うとは…。
いつか決着を付けてやる…。
王都―――
泣いた効果も有ってかアティとルナも見送りに来てくれた。
そんな僕達の素晴らしきひと時を邪魔する存在。
「王都に入るや否や会いに来るとは随分な事ですね〜?アラン王子?」
「ん?お前は誰だったかな?そんな事よりアティ…」
「話を無理矢理止めないで下さい。そして王子と言えどアティなんて気軽に呼ばないで下さいね〜?」
何と言う失礼な奴だろうか?
「何だ?未来の妃と親しげに話して何が悪い?後良い加減お前は誰だ?アティのお付きの者か?」
笑顔は保っているがいつ決壊するか分からない。
「じゃあそういう事にしましょうか?」
「だったら俺とアティの関係に口をだすな。」
ブチッと何かが切れる気がした。
「実は僕、害虫駆除を頼まれてたんですよ〜。という事で王子、消えて下さいませ。」
我慢の限界だった。
想像以上に早く決戦の時は来たようだ。
「『突風ノ槍』」
僕の手に空気で形成された槍が握られる。
「ほう、魔法か。面白い!俺もいくらかの自信はあるぞ!?
『熱刀』」
憎き敵の手に炎の剣が現れる。
う〜…火の魔法か〜…。とことんこの王子とは相性が悪いようだ。
しかし…この勝負負けられないっ!!
「「いざ、勝負っ!!」」
風の槍と火の刃が交わろうとした瞬間―――
「ストーーープッ!!」
アティに止められた。
「どうして戦うんですか!?」
「「俺(僕)とアティの関係に仇なす者を始末しようと。」」
言葉が被った。ムッと王子を睨む。向こうからも睨んできた。
「争わないで下さい!二人とも、その…好きなんですから!」
その瞬間鼻を覆った。何かイロイロ危なかった…。
「よし、ならば結婚だ!」
王子からのとんでも発言。
「ちょっと待て!アティに何言ってんの!?」
「メル兄様は年下にムキになりすぎです!あとそういう好きじゃありませんから!!」
「「…ごめんなさい。」」
また被ったし…。
アティから距離を取るように言われ互いに威嚇をしながら離れていった。
やはりこの王子とはいずれ決着をつける必要がありそうだ。
とりあえずメルキウス君のシスコンっぷりと王子との関係を明確にしたかったです。