11‐7運命の刷新
ナイフを振り上げ、飛び掛かってくる。
「お嬢様は下がっていて下さい!」
「は、はいっ!」
さっきはあんな強気な事言ってたが流石に怖い。
うん、ここは素直に任せよう。
トリークはナイフを持っているが、対してディラン先生は素手だ。大丈夫だろうか?
「お前、何故こんな事をした?」
「あの女が…、良いカモだったからだよ!」
ナイフがディラン先生目掛け振り下ろされる。
「それは…リアン、さんのことか…?」
寸での所で刃を受け止める。
「決まってんだろ?公爵家つっても中に入っちまえば警備はザルだったしな〜?本当にあの女は便利だったぜ?」
気持ちの問題なのか、刃がいくらかディラン先生に近づく。
「…けんな。」
「あ?」
「ふざけんな!!」
凄い気迫だった。
「で?」
しかし体勢が悪い。トリークは全体重をナイフに込めれば良いのに対し、ディラン先生は押されている体勢だ。
「死ねよ?」
ナイフがディラン先生に迫る。
叫び声を上げそうになる。
しかしそのナイフが刺さる事は無かった。
ディラン先生が巴投げの形でトリークを投げ飛ばしたのだ。
「ちっ、足掻きやがって…!」
「お前なんかにな…!お前なんかにリアンさんに近づく資格はねぇっ!!」
一気にディラン先生が距離を詰める。
そして袖と襟を掴む。
「俺は…、俺はリアンさんが好きなんだっ!!!」
「うおぉっ!?」
見事な一本背負いだった。
というかこの世界に柔道あんのか!?
トリークは気絶していた。まともに受け身も取ってなかったしな…。
「ご無事ですか!?お嬢様!?」
「は、はい。私は大丈夫です。ただ…。」
「ど、どうかされたのですか!?」
リアン先生の方へと顔を向ける。
そう、途中からではあるが見ていたのだ。
「リリリ、リアンさん!?」
「私、何も見えて無かったみたいですね…。」
「そ、そんな事ありません!悪いのはこの男で…!」
「…ごめんなさいっ!」
リアン先生は走り去ってしまった。
「リアン…さん…。」
誰も笑顔になれていない現在の未来。俺は本当に運命を変えて良かったのだろうか?
横に寝ているトリーク。
その手に握られたナイフ。
きっと良かったんだ…。そう信じないとやってられなかった。
後日―――
「今までお世話になりました。」
父の前に出された辞表。
「ああ、今までご苦労だった。」
原因はほぼ間違い無くトリークの件だろう。
「では、失礼します。」
「あー、ちょっと待て。」
「はい…?」
「お前の次の仕事場は決まっている。」
「そんな!お構い無く!」
「いーや、せめて返事だけでも出せ。」
「…はい。」
「あの騒動の最後を見ていたな?」
「…はい。」
「アティから聞いたぞ?ディランから盛大な告白を受けたそうじゃないか?」
「…はい?」
「男が全力で告白したんだ。せめて返事だけでもしてやれ。」
「…はい!」
「ディランと良い家庭作れよ?」
「はいっ!」
こうして一つ運命が変わった。しかしそれは誰にも知られる事は無く、正しい物であったかは誰にも分からない。
だけど…、その時のリアン先生の笑顔は一番の物だった。
リアン先生編(?)終了!!
お盆期間で少し更新止まるかもです。
質より量の小説なのに…。