11‐4運命の刷新
トリークさんの事を調べる為に俺は天界へと行く事とした。
こういう証拠確保に『生きとし生ける者の大図書館』はこの上無く便利だ。
ただある場合を除いて…。
俺は愕然とした。
名前が…無い…?
そう、トリーク・オーフェンという名前は何度探したって見つから無かった。
「そんな…。」
「どうしたんですか?浮影さん?」
「名前が無いんだ!何でだよ!?」
「落ち着いて下さい。名前が無い、ですか…。この様な場合は二つの原因が考えられます。まず、浮影さんの様に運命が無いパターン。」
つまりそれは神力かそれに近い物を持っているという事になる。
多分それは無いだろう。
「次に偽名を使っているか…。」
それだ。嫌になる程しっくり来る。
そしてこれで決まった。理由は何であれ、トリークさんは…敵だ。
信じていたかった。しかし運命は現実を少しも曲げずに、ただ淡々と事実のみを述べる。
店先で聞いたあの会話。あの女とはリアン先生の事だろうか?信じたくは無いが恐らくそうだろう。現実は…非情だ。
「…ありがとう。」
今俺はどんな顔をしているのだろう?泣いているのか、怒っているのか、それともいっそ全てに呆れて笑ってるかもしれない。
「何か大変そうですが無茶はしないで下さいね?あくまで体は普通の人と変わらないんですから。」
「分かってるさ。んじゃまたな。」
こうして俺は天界を後とした。
そして一つ決めた。
自分の手で運命を一つ変える事を。
意図せぬ所で変化した運命。
自らの意思で変化させる運命。
後者には責任が付き纏う。だけど全てを背負い込んででも今回の運命は変えたい。
見て見ぬふりはしたくない。目に入る全ての人が笑っていられる様に。
後悔はしたくない。だから俺は運命を変える。
誰かが泣いている姿は…嫌だ。
次の日、俺は起きて考えた。
どうすれば運命を変えられるか。まず、俺が行動をしなければ始まらないのだ。運命を変えられるのは俺しかいない。
まず、証拠だろう。あの髪留めでも十分な証拠だが何よりも現場を抑えたい。
言い逃れはさせない。確実にトリークさん…いや、トリークを止める。
残念ながら今すぐには行動に移せない。しかし、昨日の会話を聞く限りにはきっと近い内に再び行動に出るだろう。
その時を狙う。
良いぜ…。リアン先生がこんな悲しい運命しか選べないなら、
俺がその運命をぶち殺す!!
前世で読んだとある小説の決め台詞を心の中で叫ぶ。その直後恥ずかしさで鳥肌が立った。
ごめんなさい…。
最後ちょっと調子乗りました…。