11‐3運命の刷新
「ふぅ…。」
トリークさんが店の奥から出て来る。
「ん?」
トリークさんと目が合う。
「これはお嬢様!このようなみすぼらしいお店に如何なるご用事で?」
「お恥ずかしながら道に迷ってしまいまして…。」
本当にこの歳で恥ずかしい…。
「良くこの店に来れましたね?」
「以前お話に聞いていた物で。」
それでも良く覚えていた物だ。
「こんな下賎な男の話を覚えていて下さるとは…。誠に恐縮でございます。」
すごい遜ってるな…。
「あの…、お屋敷までの道って分かりますか?」
「はい、勿論でございます!ご案内致しましょう!」
助かった…。
「それではお願いいたします。」
「お任せ下さい!」
「あ、それと…、こちらの商品はいくらでしょうか?」
あのアクセサリーを手に取る。
「そ、そちらは…。」
言い淀むトリークさん。
「そちらは50サウンなります。」
日本円に換算して五万円。
高いな〜…。
しかし手持ちは何とその二倍、100サウン有るのだ。
「分かりました。」
50サウンを払う。
この前ルナが失くした髪飾りはお気に入りだったらしく。一日中無い無いと探し回っていた。
似ている奴でいくらか気が紛れると良いが。
「…ありがとうございました。」
半分呆然とした様子でお金を受け取り、商品を渡してくれた。
「では、行きましょうか?」
「…はい。」
何故かトリークさんは元気を無くしていた。
家に着いても誰も居なかった。メイドさんから誰も。
いや、一人居た。
「お、お嬢様!!」
「何故誰も居ないのでしょうか?」
その後事情を聞くと単純に俺が居なくなった事に起因するらしい。その結果屋敷中で大パニックになったそうである。
母からは自分の立場を理解しなさいだとかで叱られた。
今後はいくらか配慮するようにしよう。
「お姉様も人騒がせですね?」
「うー…、反省してます…。」
「ふふっ、よろしい!」
全く…どっちが姉か分からん。双子だから大して変わらないけど精神的には俺の方が三倍近いからなー…。
「あっ、そうだ。はい、お土産。」
トリークさんのお店で買った物を渡す。
「何ですか?あっ、私の髪留め!」
「そっくりなのだけどね…。」
「いえ!これは私のです。ほら、ここに私のイニシャルが…。」
本当だ…。
「ありがとうございます!どこにありましたか?」
俺の中でトリークさんへの疑念が高まっていった。
「あ、うん!えーと、そこの茂みに引っ掛かってたよ!」
まだ証拠が足りない。ルナや他の人にはまだ伏せておく事にした。
「ありがとうございます!」
トリークさんは…何者なんだ…?