11‐2運命の刷新
俺は今日すごい機嫌が良い。何故なら去年の王都訪問以来の外出が出来るのだ。
というかまず、この歳で2回しか外に出たこと無いって…。
とりあえずそんな事はどうでもいい。今日の外出というのはリアン先生への結婚祝いを買いに行こうという物だ。
結婚はほぼ確定。というか俺が何かしなければ運命はそのまま流れるから当たり前だが。
そして遂に俺は外へと足を踏み出した。
今まではずっと町を屋敷の中から見ていただけだった。
活気溢れる町は、近くて遠く、憧れて止まない場所だった。
「アティちゃん?行くわよ?」
「はい、お母様。」
呼ばれて少し歩みを速める。
今日は母とルナと俺の比較的目立たない服装でのお出かけだ。お忍びという程では無いが、現代日本と比べれば流石に劣る治安の事を考えれば妥当な判断だろう。
今更ではあるが時代背景は中世なんだなと改めて思う。
石造りの建物なんて日本じゃほとんど見ない。商業用の馬車が脇を通っていく。前世を知らなければ何とも思わない事かも知れない、しかし俺には視界に映る全てが新鮮に感じる。
住民は獣人の領地だけあって何らかの獣耳が付いている者が多い。
犬や猫といったオーソドックスな者、猿耳なんてのもいたが人間って元から猿なのではと疑問に思ったりする。とにかく普通の人間には見られない程にバリエーションに富んでいる。
そんな調子で周りを見るのに忙しくなっていた。
気が付くと周りには母やルナの姿は無かった。
…またか?
迷子だった。
ふぅっ…、落ち着け俺。
いつぞやの王城の様に周りに人がいない訳ではない。しかし話し掛けるのが少し怖い。
…そうだ。トリークさんのお店の場所の紹介を受けていたじゃないか。
恐らくそこにトリークさんが居る事は間違いないだろう。知り合いの人の方が都合が良いだろう。
ここは…ティグ通りか。確かトリークさんのお店もこの通りだった気がする。
店を一軒一軒見てそれらしき店を探す。
…あった。
ここがトリークさんのお店か〜…。決して大きい訳ではない。しかし慎ましい感じの良いお店だ。
恐る恐る中に入ってみる。
レジに当たる所には誰も居なかった。
店の奥から声が聞こえてくる。人間には聞こえないくらいの小さな声だが、獣人の五感は優れているのだ。どうやら最近になって開発された通信玉と呼ばれる電話に近い物での会話らしい。
「…大丈夫です。あの女は気づいてません。へま?そんなのしませんよ。したってあの女のせいにして切っちゃえば良いんですから。」
…何の話をしているんだろうか?
何となくこれ以上聞いてはまずい気がして店の商品を見る事とした。
雑貨屋だけあって様々な物がある。中には髪飾り等といったアクセサリーまであった。
あ、これ可愛いな…。ルナがこの前失くしたって言ってた奴にそっくりだ。
幸い手持ちもいくらか貰った為、これ以上の買い物も無理そうだし、お土産…というのには少し語弊がありそうだが買って行く事とした。
あ、トリークさんが奥から出て来た。