11‐1運命の刷新
リアン先生の結婚の話から三週間。
メル兄は試験の為に王都に行ってしまった。
とりあえず現在庭園を散歩中、色取り取りの花があり、なかなか綺麗だ。
前世は特に散歩や花が好きだった訳ではない。単純に元の世界に比べ娯楽が少な過ぎるのだ。
しかし最近はこんな時間も楽しめる様になってきた。
たまに性格を矯正されてんじゃないかと怖くなるけど。
前方5メートル程に俯いた大柄な体が見える。
近づいて声を掛ける。
「どうしたんですか?ディラン先生?」
ディラン先生は主に武術の先生で熊の獣人だ。大きなお腹に抱き着きたくなるが、行動に移す程俺は短絡的ではない。ああ…、すごいふかふかしてそう…。
「あぁ…、アティお嬢様…。」
アレス兄が学校に行ってしまってからあまり元気は無かったがリアン先生の結婚の話を聞いてから更に元気が無い。
「リアン先生の事ですか?」
「ちちち、違いますよ!!」
面白いくらいに動揺しているな〜。
だいぶ昔、それこそ学生時代程からリアン先生の事を気にしていたそうだが、結局どうする事も出来ずにリアン先生の結婚という話が出てしまったそうだ。
可哀相っちゃ可哀相だが、それは昔から決まっていた運命。無理に変えるつもりは無いし、変える訳にはいかない。
「あら、そうでしたか。」
「そうですよ!何言ってるんですか!」
ちょっとからかい過ぎたかな?
「でも、理由は何であれ最近元気が無いですよ?」
「…自分でも分かってはいるんですよ。ですけれど…。」
ウジウジしてるなぁ…。
元男として何と言うかもっとシャキッとして欲しい。
「そんなだからリアン先生を取られてしまうんですよ!」
言ってからちょっと言い過ぎたなと思った。しかし一度吐いた言葉は飲む事は出来ない。
「お嬢様…。すみません…。みっともない所を見せちゃいましたね…。ありがとうございます。元気が出ました。よし!もう一度自分を見直したいと思います!」
言い過ぎたかもしれないけど良い方向に転んでくれた様だ。
「ご迷惑をおかけしました!」
リアン先生のことはいくらか踏ん切りが付いた様だ。
「もう少し落ち着いたら私にも武術を教えて頂けませんか?」
この際だから頼んでみる。いつかの日に備え武術を心得るのも悪く無いだろう。
「お嬢様に…ですか…?」
不思議そうに聞いてくる。
「はい。いけませんか?」
まあ確かに貴族の娘が進んで習う物でも無いかも知れないが。
「いえ、武術を志す事は良いことだと思いますよ?ただ…。」
「ただ…?」
「ケガの恐れなどもありますので、お嬢様が習うのは如何な物かと…。」
「あら?これでも武王の血を引いているのですよ?」
武王。十数年程前、町一つを滅ぼす程の竜に立ち向かい、一人で竜を討ち取ったという俺の父親。
最初は冗談だと思っていたが何と本当だとか。
「ふふっ、なら武王様に意見を仰がないと。」
悪くない感触…かな?
血は引いてても才能何て無いかもしれないが。
やっと名前だけだったディラン先生を出せた…。