9‐5入学式と一つの決心
「浮影さん?どうしたんですか?」
天界でお馴染みの天使のお出迎え。
「時間が有るし、気になる事があってさ。」
無論ルナの事だ。
「気になる事ですか…。」
「なあ…。前言ってたよな?神力が有る者は他人の運命に干渉出来るって?」
その言葉から察したのか
「なるほど、誰かの運命を変えてしまったかも、と?」
図星だった。
「図星ですか。」
何か知らないが悔しい。
「それは仕方ない事ですよ。あなたがあの世界に生きている限り呼吸と同じ様にあなたの周囲の運命は変化し続けるんですから。」
「だけど、どうにか出来ないのか?」
「無理です。」
ばっさりだった。
「そんな都合の良い事が出来れば貴方をあの世界に送ってなんかいませんよ。」
世の中そんな都合良くないか…。
「人の運命を変えたく無ければ山篭もりでもして下さい。」
山篭もりか…。現代人から箱入り娘でさらに魔法も使えずだから一週間ももたないだろう。
そんな事を考えながらも『生きとし生ける者の大図書館』を使用し、ルナの運命を見ていた。
運命はおおよそ俺の予想していた最悪の方向へと向かっていた。
ルナの結婚の運命が消えていた。
正確にはそこの部分が塗り潰された様に黒くなり読めない。
「何なんだよ…。」
ギリッと食いしばる。
「どうしたんですか?浮影さん?」
本を天使に見せる。
「これだよ。黒くなってんじゃん。」
「その本は貴方の想像ですから私は見れませんが、つまり運命が見れないと?」
ふーむと考え込む天使。
「私はその様になった事がありませんから分かりませんが、恐らくは運命の不確定から起こっているのではないかと思われます。」
つまりは…、
「どんな運命になるか分からない、と?」
「はい、その時間に2つ以上の同時に起こり得ない事象が重なり、運命が不安定になってるのでは無いかと思われます。」
俺は考えた、いやもう答えは決まっていた。
「なあ、それは1つの事象が消えれば元に戻るのか?」
「重なっているのが2つなら、そうなりますね。」
この返答で決心がついた。
「そうか、ありがとう。」
「何をする気かは分かりませんがくれぐれも無茶はしないで下さいよ?極論貴方は世界を壊す運命すら持ち合わせるんですから。」
流石にそれはしない。
「大丈夫、そんな大それた事はしないから。」
ただ、俺が今の立場からいなくなるだけだ。
そうすればきっとあの惚れっぽい王子もルナに気が向くだろう。
「付き合ってくれてありがとな。」
んーっ!と背を伸ばし、
「さて!感覚を忘れないうちに神力をマスターしようっ!」
振り払う様にそう言った。
そんな俺を寂しそうに見つめる天使の視線に俺は気付かなかった。