9‐2入学式と一つの決心
「…新入生一同このソリド王国の未来を担う者としての自覚を持ち、勉学に励みたいと思います。新入生代表、アレスト・ドグラン・トピアーゼ。」
パチパチパチパチ。
会場が拍手に包まれる。
流石根っからの優等生タイプ、代表挨拶が様になる。
「続きまして。保護者祝辞、クロノス・マスグラン・トピアーゼ様お願いします。」
さっきから身内の話ばっかだな…。
「皆様こんにちは、先程の息子のスピーチご静聴ありがとうございます。
さて、私からは学生生活に置ける三つの柱について…」
うわ、テンプレ…。
こういうのは眠くなって…く…る……。zzz…。
そして夢の中へフォールダウンしていった。
夢うつつ、起きているのか寝ているのかは自分でも分からない。
目の前に広がるは昨日の様な七年前の最期。
きっと夢だな…。
見慣れた通学路、見慣れない二人、完全にとばっちりの俺…。
もし、俺があの時コンビニにでも寄ってたら?
補習でも食らってたら?
この世界には来なかったのだろうか?
いや無駄か…。運命を変えたんじゃない。変えられただけなのだ。
それに別にこの世界に来た事を後悔はしていない。
前向きに考えるんだ。ある意味得しているじゃないか。最終的に元の世界にも戻れるらしいし。
運命を変えた『あれ』と悪魔には身勝手さに苛立ちを覚えないでもない。しかし俺は今のこの世界を楽しめているからまだ良いものだが。
ったく…、あいつら人の迷惑を考えろっての…。
ここでふと疑問が湧いた。
俺はもしかしたらルナや王子に対しあいつらと同じ立場にいるのではないか?
意図せず、いやあいつらも意図はしていなかっただろう、とにかく俺は運命の輪の外から他人の運命をあらぬ方向に変えようとしている。
自分でこの事に気付くと自分が堪らなく恐ろしく身勝手で醜い迷惑な存在に思えた。
何一つ今の俺にはあいつらを否定する権利は無い。
こんな自責の念から一つの決心が固まった。
いつか家を出よう。
今更俺がいなくなったからと言って何も変わらないかもしれない。
でも俺は居ても変わらない存在ではなく、居てはいけない存在でもなく、ただ元からいない存在なのだ。
きっと俺が元のいない存在になればあの子達は元の運命に自然と戻ってくれるだろう。
いや、例え違うとしてもこれ以上あの子達の運命を歪める訳にはいかないのだ。だから俺は家を出る。
とは言え七歳児の家出など高が知れているのでもう少しはお世話になると思うが。
別れは辛い。しかしいつまでも此処に居ては予期せぬ迷惑を掛けるかもしれない。俺はそんな事になったら自分を許せないだろう。
だから…、俺は家を出るのだ。
書いていて思った。
入学式関係無いじゃん!
まあ、気にしないで下さい。