1‐4何コレ理不尽?
その後いくつかの質問をした。どんな世界?魔法とかあんの?だとかそんな内容だ。
返答はこうだ。元の世界でいう中世のような世界で魔法が日常的な物なのだそうだ。正直科学の跋扈する現代日本の申し子にそんなことを言われてもわーすげーファンタジーだね〜と他人事のような感想しか浮かばない。
はあ…見つめ直したら辛くなってきた…俺にだって家族も友達もいるのだ、それが急に殺され、異世界に行け、だ。
中途半端に常識に囚われている俺のような人間には、既に何が何だかだ。
「そろそろ準備は良いですか?」天使からお呼びが掛かる。
「準備ったって精々心の準備くらいじゃねぇか…」
「それもそうですね。じゃ、行きますよ。」
「おう、…で、何をすれば?」
「何もせず力を抜いて下さい。」
天使が何かやっているが全く見当もつかない。
そして俺の意識は水に溶かした絵の具の様に広がるように薄れていった。
うまく聞こえないが天使からは良い人生を、そんな風に言われた気がした。
望まぬ新たなる人生ではあるが多少やる気が出てきた。さて…
ぼちぼち頑張りますかっ!!
気が付くと今度は真っ暗な空間にいた、先程の天使がいた真っ白な空間と打って変わりとても狭い、音も水を通した様にぼやける様にして聞こえる。しかしあの空間と共通し、何処か安心出来る感じがする。
寝てたのは一瞬だったろうか?数ヶ月だったろうか?目覚めたての頭はそんなことを考えられない。
!!
周囲が動き出した!?
狭かった空間は俺を押し潰さんばかりに圧迫してくる。
ついに真っ暗な空間から抜けだした。同時に口の中に得体の知れない物の入ってくる感覚、慌てて吐き出そうとする。
「おんぎゃあーっ!おんぎゃあーっ!……」
一瞬自分が泣いてるなど思いもよらなかった。
長きにわたる胎内の生活は呼吸の仕方すら忘れさせていた。
(つまり俺は生まれたんだな…)
こうして今ここに浮影俊喜の新たなる人生が始まったのだ。
やっと…やっとのこと主人公誕生…
もっとこうテキパキした展開の方が良いんでしょうか?