8‐1王城訪問と意気消沈
王都二日目―――
昨日からメル兄はみっちり絞られ、ぐったりとしている。
「今日は王城に行くぞ。」
王城というと名のとおり王様がいるあそこだろうか?
俺は現代日本人なんだ。王様=凄い偉い。その程度のイメージしか無い。
無礼を働いてもいきなり打ち首とかは無いだろうと思うが可能な限り気をつけたいものだ。
今日はアレス兄は入寮手続きだとかで別行動だ。
メル兄は昨日の事で謹慎というかそれ以前に行動不能だ。
そして王城でも再びあの紙。
「『確認』」
やはり勝手に門が開いていく。
ホント凄い。ファンタジーのくせに現代並のテクノロジーだ。
「お父様、その紙ってなんですか?」
やっぱりこの紙が何かあるんだろう。
「これか?これはギルドカードと呼ばれる物だよ。これ一枚で私が私である証明になる。」
ギルド…。そんな物までこの世界は完備なのか…。
というかギルドカードすげぇ…。
魔法って実は科学より便利なんじゃなかろうか?
そんなこんなで今王城内。
とりあえず構造上仕方ないんだろうが王の間までの道のりが複雑で長い。
というか俺はついて来たは良いが何をすれば良いんだろうか?
「お父様…。」
「何だい?アティ。」
「私たちは何をすれば良いんでしょうか?」
「何もしなくても良いさ。今日は陛下への挨拶だから礼儀正しくしていれば大丈夫だ。」
…王様に会うのか。
ボロを出さない様にしないとな…。俺だけならまだしも公爵家の恥に成り兼ねん…。
最近はちょっと公爵家の令嬢という意識が付いてきた、世話になってるのもそうだがそれ以上に家族だから。
最初はこの世界を神力を使い切る場所、その位にしか考えていなかった。しかし違った。
ここには感情のある人がいる。もしかしたら元の世界より余程人情味のある人達が。
そして元の世界の浮影俊喜も俺だが、この世界のアティーニャも俺なんだ。
俺はここに存在している。だから俺は生き続けるんだと思う。
そして何でかこんな隙間時間に俺という意義を語ってしまったが俺はそんな隙間に収まる程薄っぺらい人間じゃない。…多分。
そうしている間に王の間。腹を括れ俺。大丈夫、今日は挨拶なんだ緊張する必要なんて無い。
はぁ…、腹を括るどころか痛くなってきた…。
「入れ。」
重く響く声。
「失礼します。」
多分俺の前で初めて見せるであろう仕事モードの父。
これから会う相手はそういう人だという事だ。
重く開く両開きの扉。
息を飲む様な空間がそこには広がっていた。
壁やあちこちに施された精密な彫刻。
両サイドに構える国の重役と思われる大臣方。
玉座に向かって伸びる赤絨毯。
失礼だが見た目は普通の人間(じゃないかも知れないが)のおじさんなのに明らかに纏う空気の違う玉座に君臨する王。
俺が居て良い場所じゃないと本能的には悟るが、ここで帰る訳にはいかないんだよな。
はあ…。
何とかなると良いけど…。