7‐2王立中央学院
旅は始まる前がもっとも楽しいと誰が言っただろうか?
およそ6時間程になる。
馬車に揺られ揺られ段々お尻が痛くなってきた。馬車の旅を楽しみにしていた俺は何だったのだろう…。
これでも高級馬車らしいが現代の車にはやはり遠く及ばない。
とりあえず馬車に乗ってるのは俺、ルナ、れんkもとい同行しぐったりしたメル兄、入学を前に緊張した面持ちのアレス兄、父、護衛のおじさん一人。母は留守番らしい。
馬車は意外と広く、まだ二人は入りそうだ。
ぎゅうぎゅうよりは良いんだが。
そしてメル兄はともかくまだ馬車での移動が二、三日あるらしいのにアレス兄はこんな緊張してて大丈夫なのだろうか?
更に2時間―――
急に馬車が止まる。何事かと思っていると護衛のおじさんが剣を携え馬車を降りる。
そっと馬車の昇降口から外を覗くと
スライムAがあらわれた。
そんなテロップの流れそうないかにもファンタジーな存在がいた。
馬車の前に立ちはだかるゲル状の不定形生物(?)。
魔物―――
以前リアン先生に習った話だと昔魔王が現れたのと同時に姿を現した謎の生物。人に危害を加え、魔王と共に人の領域を侵した存在。魔王亡き今もちょくちょく現れるのだそうだ。
どうして今も現れるかは分かっていない。一説には魔王がまだ生存しているだとか、生態系の一部として組み込まれてしまっただとか様々な物がある。
群集ならまだしも一体だと…。
そんな解説をしている間におじさんが剣で叩き伏せる。
ゲル状の肉体(?)は残っているがぴくりとも動かないので恐らく死んだのだろう。
一体では圧倒的に弱い。まあスライムがあまり強くても困るけどさ。
逆に一匹で小国程度なら滅ぼせるようなのもいるとか。
おじさんが乗り込み、馬車が再出発する。
「あの?」
「ん?なんでございましょうか?お嬢さん。」
微妙に慣れていない感じの敬語だった。
「あれは何だったのでしょうか?」
一瞬考え、あーあれかといった感じで答える。
「お嬢さん魔物を見るのは初めてかい?」
「話には聞いた事があるのですが…。」
「そうか、あれはスライムという魔物でね、まあもっともポピュラーな魔物だよ。」
名前そのまんまだな…
竜のクエスト的な雫型じゃない分版権に問題は無いか…。
「大丈夫。あれ程度何匹来ても俺と後ろの馬車の奴らがいる限り心配はいらないさ。」
後ろにも護衛の馬車が付いて来ており、結構な警戒体制だ。
国の重役でもある父を考えるとむしろ少ないかもしれないが。
とまあ何度かの魔物の襲撃と一度山賊も襲って来たが護衛がとにかく強かったので全て事なきを得た。
そして目の前に広がる風景。
「うわぁ…!」
正に中世を絵に描いた様な町並み。
つい感嘆の声を挙げてしまう。
ウィルディアもそこそこ栄えていた、しかし王都は違った。現代日本にはなかなか無い様な暖かみのある活気。
そして一目で分かる自分とは違う人々。
鱗みたいなのが付いてる人もいれば翼の生えてる人、身長120センチ程のオッサン(恐らく小人かな?)。
ホント多種多様な人々だ。
出来る事なら自分の足で見て回りたい。
もっともそれも叶わず後ろに流れていく町並み。
少し残念になる。
こんな事なら一般人に生まれたかった…。
タイトルは学校なのにやっと王都に着いたとこという…。