7‐1王立中央学院
アルマ先生から魔力媒体についての特別講習を受けた日の夜。
この夜に突然の重大発表が成された。
それはおよそ二週間後にアレス兄が王立中央学院に入学するという物だった。
王立中央学院とは話を聞く所に寄ると、王都にある貴族の子女の多くが通うという名門の総合学校だそうだ。
また、この学院は全寮制で半年に一度の長期休暇しか基本帰って来れないそうだ。
重大なのはそこじゃない。
いや、アレス兄がどうでもいいとかという訳じゃなく。
「…私やルナも行くんですか?」
「そうだ。いずれお前達も通うんだ。見て来て損はないだろう。それに私もアレスに付いていくからな、私が居ない間にお前達に何か有ったらと考えると…。」
前半には納得出来なくも無いが後半はもう駄目だこの人という感想が浮かんだ。
冗談かも知れないがこの人は半分以上本気だろう。
「ルナは行くの?」
「はい、お姉様が行くなら。」
最近ルナは俺にべったりだ。
可愛いから良いんだけどさ。
「では行く事にします。」
「良かった。メルも行くから目を離さないでいてくれ。」
「…はい。」
とりあえず妹に面倒見られる兄ってどうなんだろう…。
それにしても…。この世界来てからこの家の敷地から出るなんて初めてじゃなかろうか?
中庭には実習とかで何度か出ているが外の世界を 肌で感じた事は無い。
故に一般市民の生活レベルも知らない。
俺にとっての狭い世界の中での生活はそれなりに幸せな物だがそれが市民の辛苦の上に成り立つ物だとしたら降り懸かる罪悪感はとても大きい。
まあ王都って言うくらいだから栄えているんだろうし、少なくとも屋敷の窓から見えるウィルディアの風景は平和そのものだ。
アレス兄は優秀だから心配は無いが半年も帰って来れないのか…。
俺が今7歳、アレス兄が5つ上の12歳。つまり俺も恐らく5年後には向こうに行かなければならない。
5年か…。この間に何とかして魔法を使用に堪えうる物にしないとな…。
この世界は魔法が当然の様な世界ならしいから魔法を使えない=圧倒的不利が成り立つのは明白だろう。まあアレス兄も得意ではないらしいが、それを補う武術があるから問題無いだろう。
後は不自然にならない様なら神力をこっちでも使えるようにしたい。
前世で一子相伝の暗殺術の様な物は勿論習っていないし、こっちの世界でも武術は習っていない。
強いて言えば獣人という肉体の兼ね備える優れた身体能力が武器と成りうるかも知れない。が、やはり心許ない。
明日の朝には馬車で王都に向かって出発だそうだ。
ホント急な話である。
とりあえず今日はゆっくり休むとしようか。