6‐4魔法への過信
俺は天界に向かいながら決意を固めた。
魔法にはもう頼らない、と。
魔力が無いのでは始まるもんも始まらない。
そして同時に俺の現人生の目標となっている神力を極めようと心に決めた。
きっとこれこそが俺にしか出来ないことだろう。
「浮影さん?今日はいつもと違う時間ですね?」
「…別に良いだろ?タイミング悪かったんなら明日来るけど。」
「いえ構いませんよ。今日は何をしにきたんです?」
「修行だよ。修行。ただ、今日こそ絶対完成させる。」
強い意志とともに放つ言葉。
「違うのは時間だけでは無いようですね。」
天使が何か悟ったのか真剣な口調で言う。
当然だ。今までのが遊びに思える程に今の俺の決意は強い。
「付き合いましょうか?」
「いや、良いよ。」
正直コイツの曖昧なアドバイスは無い方がわかりやすいんじゃないか、最近そう思ってきた。
「そうですか…。」
何か残念そうにする天使。失礼な事を考えていたのも含め何かゴメン…。
修行に入って早一時間。残された時間は少ない。
今やってるのは瞑想。とにかくイメージの固定に力を注ぐ。
今までに無く集中する、このスッとした何とも言えない感覚。
明鏡止水の心とでも言うのだろうか?
今の状態がとても心地良い。
今なら出来る。そんな確信を持った瞬間―――。
バチバチッ!
俺の手の平から紫電が流れる。
「や、やった…!」
それはとても小さな物だったが俺にとって大きな一歩だった。
「やりましたね!浮影さん!」
天使が駆け寄って来る。
「あぁ…。これが神力の力で間違い無いんだよな?」
これで違うとか言われたら俺の中の何かが壊れる気がする。
「はいっ!おめでとうございます!浮影さん!」
「良かった…。」
集中力も途切れ、ふっと意識が飛びそうになる。
「これで魔法が使えなくても何とかなるな…。」
「そういえば神力は魔力にも変換出来るんですよ?」
この天使は話を聞いていなかったのだろうか?
「だから俺は魔力が少なくて魔法が使えないんだって…。」
「私の見解では浮影さんの魔力の総量はそこまで少なくないと思いますよ?」
「は?現に俺は初級魔法すら失敗して…るんだっ…て…。」
意識が飛びそうになる。
というかもう限界…。
「なら…外…因…ると…すよ。」
俺の意識は天使の話を最後まで聞かず天界を去った。
見慣れた天井だ…。
天蓋付きベッドだから正確には天井では無いが。
そういえば俺ドアの前で天界に入ったよな?
きっと母が運んでくれたんだろう。
しかし天使が最後に言った言葉。
俺の原因は魔力ではない…?
だとしたら俺にもまだ魔法を使うチャンスがあるという事だ。
魔法…。もう少し頑張ってみるか…。
それよりも…。
「あーあー。」
昨日無茶し過ぎたな…。
声はかなりガラガラだった。
食堂にて―――
「お早うございます。」
「お早うアティちゃん。」
「お早うアティ。」
「お早う」
両親とアレス兄から返事が返って来る。
そして考え直し、決意の言葉。
「お父様、お母様。私、もう少し魔法を続けてみたいと思います。」
一瞬の沈黙。そして
「良く言った!!それでこそ我が娘だ!そうだ。一回の失敗位にへこたれるな!」
「私も同じ意見です。貴女がやりたい道を突き通しなさい。」
俺は両親の激励の言葉を胸に魔法へのリベンジを決めた。
主人公がやっと神力を獲得!
しかし現世で使えるのがいつになるかは作者も決めていなかったり…。