6‐3魔法への過信
ただひたすらに悔しかった。
涙が次から次へと溢れる。
バタンッ!
自分の部屋へ飛び込む。
扉の前で自分でも情けなくなる程に膝を抱え泣く。
此処まで自分の非才を嘆いた事は無い。
だんだん自分が泣いている理由が分からなくなってきた。
魔法が使え無かった事への悔しさ?
自分の才能の無さ?
はたまた魔法が使えたルナへの嫉妬と羨望の様な気さえした。
トントン。
どのくらい呆然としていただろうか?
その音にハッとなる。
「アティちゃん…居る?」
母だった。
一瞬躊躇い。
「…はい、お母様。」
気付いいなかったがかなり声が掠れる。
「夕食食べないかしら?」
「…いりません。」
とてもそんな気分では無かった。
「ちょっと…。昔の話をしましょうか。」
急激な話題転換にじっと黙って聴き入る。
「昔って言っても三年前位の話なんだけどね、貴女が4歳の時になるわね。
アレスちゃんも魔法が余り得意じゃなかったの。表には出していなかったけどあの子も焦ってた。」
アレス兄が…。
正直あの人は何でも出来る完璧超人というイメージがある。
「そんな時にメルちゃんが魔法を始めて、神童と呼べる程の実力を見せるからあの子も色んな気持ちがごちゃごちゃになっていたと思うの。でも私達はあの子の焦りに気付いてあげられなかった。」
そういえば思い出した…。三年前位にアレス兄が寝込んだ事があったっけ…。あん時は理由とか知らなかったけどそんな事があったんだ…。
「だけどね、あの子はあの後あの子なりに努力したの。魔法はあまり使えないけどその分武術に打ち込んだ…。血の滲む様な努力を重ねた。今では国で十指に入る得る程にね…。」
凄いな…。アレス兄は…。アレス兄だけじゃない。メル兄もルナも皆凄いのに俺だけ…。
「ねぇ、アティちゃん。魔法は…楽しい?」
「………!」
言葉が出なかった。
「あっ、これは魔法をやめろとかって意味じゃなくてね。」
「…楽しいと思います。」
自分の言葉に自信が持てなかった。
「なら良いのよ。貴女のやりたい事を続けなさい。そしていつか自分にしか出来ない事を見つけなさいな。」
自分にしか…出来ないこと…。
この言葉に自分の意思は固まった。
『GO TO HEAVEN』
「何か言ったかしら?」
自分にしか出来ないこと。俺にとってのそれはきっと神力の操作だ。ならばそれを極めてやる。そんな強い決意とともに俺は天界へと向かった。
その頃―――
「アティちゃん?聞いてる?」
ガチャッ!
「フフッ。泣き疲れちゃったのね…。」
ベッドへと運ぶ。
「貴女には貴女しか出来ないことがきっとあるのよ…。だから頑張ってね。」
寝ているアティに微笑み掛け。
「お休み。」
そういって部屋を後にした。