6‐2魔法への過信
端的に言えば魔法に失敗した。
大気圏まで飛ぶかも、そんな事を考えていたそんな事を考えていた自分が恥ずかしい…。
浮いてない。いや、正確には地面より3ミリ程浮かんでいる。いや3ミリって某猫型じゃあるまいし…。
「失敗…ですかね…。」
アルマ先生から呟きが漏れる。
「原因は何でしょうか…?」
理由があっての失敗ならまだ納得できる。その原因を克服すれば魔法を使える可能性がまだ有るからだ。
「そうですね…。考えられるとすれば…。」
顎に手を当てて考えている。
「まず、イメージの欠如。しっかり箱が浮かび上がるイメージをしましたか?」
「はい、多分。」
自信は無いが最低限にはイメージが固まっていたと思う。
「では世界に魔力をしっかり与えましたか?」
「何かが抜けていく感覚はありましたが…。」
「はい、多分それです。」
与えるというよりは奪われるという気がするが…。まあそこは良いだろう。
「となると魔力媒体の相性が悪いか、申し上げづらいですが総魔力数が少ないか…。」
「そうですか…。」
「魔力媒体の適合は個人差がありますから。相性の良い物を探して行きましょう。」
「そうですね。」
非常にまずい事となった…。前者ならまだ良い。適合する物を探せば良いだけだ。
しかし後者ならどうか?魔法を一生使えない可能性すらあるし、前世は魔法の無い世界から来たという思い当たる節が無い訳でも無い。
「今日の実習はこれで終わりです。もしこの後も続けたいなら私の眼下であれば認めます。」
「続けたいですっ!」
勿論即答だ。このまま魔法を使えませんでしたなんて冗談じゃない。
これで終わってはとても満足出来ない。
「お姉様がやるなら私もやりたいです。」
ルナも付き合ってくれるようだ。
「これは私はしばらく帰れそうもありませんね…」
半分呆れた様子でアルマ先生が呟く。
「…フロート!フロート!フロートッ!」
もう何十回いや何百回唱えただろうか?しかし何回やっても浮かない。
「フロートッ!げほっげほっ!」
むせた。声ももうガラガラだ。
「もう無駄です。魔力ももう切れてるでしょう。」
フルフルと無言で首を横に振る。
「無茶をして体を壊したら元も子もありません。今日はやめましょう。」
フルフルと首を横に振る。
「やめなさい。コレは命令です。」
「嫌ですっ!」
心からの叫びだった。
「ドクターストップです。貴女を意地でも止めます。」
先生は本気のようだ。
俺は走り出した。先生は追って来ない。
涙が溢れる。
これがこの世界で初の挫折だった。