5‐4魔法学の指針
次の日―――
朝食も終え、ルナとともにアルマ先生の部屋へと向かう。
トントン!
「どうぞ。」
「「失礼します。」」
「ようこそアティーニャさん、ルナシアさん。」
「「今日はよろしくお願い致します。」」
「いえ、こちらこそ。」
今日は初の魔法の授業だ。緊張と興奮に胸が高鳴る。
つってもまずは座学だからまだ実際に魔法を使える訳でも無い。あまりやる気は上がらないがやはり未知の内容だ。一字一句足りとも聞き逃す事は出来ないだろう。
「まず、魔法とは何だと思いますか?じゃあルナシアさん。」
いきなりの質問だ。
「えーと?不思議な力?」
何とも可愛らしい返答だ。しかし俺もそんくらいにしか理解していない。
「まあ最初はそんな物でしょう。魔法とは厳密には魔力という物を介し、世界に改変を起こさせる物です。少し難しいでしょうか?」
魔力ね…。結構有りがちな感じかな?ここで一つどんな魔法があるかを確かめるとしよう。
「先生!世界の改変とは具体的にどのような事があるのでしょう?」
「良い質問ですね。例えば昨日の様に物を浮かせる魔法、風の弾丸を飛ばす魔法。世界では様々な魔法が今も考えられ続けています。」
…ん?
「考えられている?」
「そうです。魔法とは想像の力、似た魔法を使おうとも十人十色、使い手により少しずつ違うんです。」
ふーん…。
「でもそれなら先生が教える意味が無いのでは?」
ストレートに疑問をぶつけてみる。だって先生の魔法だって俺やルナの魔法と微妙に違う筈なのだから。
「うっ…痛い所を突きますね…。そうです、私が教えられるのは基本だけです。後は今のメルキウス君にやっている様に魔法開発の手伝いをする位です。」
魔法か…。俺の魔法はどんな物なのだろうか?きっと昨日見た様な魔法とも多少なりとも違うんだろうな。有りがちな話で言えば属性なんてのもあるんだろうか?特に昨日のメル兄の魔法なんて風属性っぽい。
「だから私の授業の指針は貴女達の想像力の強化とイメージの固定化のお手伝いです。後は事故を起こさない様に監視ですかね。」
想像力かぁ…。妄想力なら多大にあるから応用出来れば良いのにな。
そんな下らない事を考える。
「ま、貴女方はまだ魔法を使える段階にもたどり着いていないのでまずはそこから、いえそこまでです。」
「「はい!」」
まず俺はスタートラインにも立っていない。
前世から勉強という物には苦手意識があるが、こんなワクワクするような内容なら大歓迎だ。
どのくらい努力を積めばメル兄に届くのだろうか?
それは果てしなく遠い道のりに思えた。しかし目標は大きい程良い。
いつか追い付いてみせる。そんな決意と共に頑張りたいと思う。