4‐5日々邁進
その夜は慣習となっている天界へ行く日だった。
『GO TO HEAVEN』
意識が揺らぎ気付くと天界にいる。もうこの感覚には慣れた。
タイマーを想像する。するとタイマーが出る。ここでは想像すれば基本何でも出てくる。ホントに便利でご都合な世界だ…。
「90分っと、」
あまり居すぎるとまた問題になる。
もう見慣れた純白の翼を背負った天使が現れる。
「えーと、こんばんは…?ですか?」
「あぁ、そうだな」
「今日は何です?修業ですか?それとも『生きとし生ける者の大図書館』でも使いますか?」
「いつも通り修業だよ。付き合ってくれる?」
「はい、私も今は大丈夫ですね。」
「おう、ありがとな。」
こうして今日も修業(?)が始まる。
具体的な方法が有るわけでも無く、ただ天使の抽象的なアドバイスの元に神力を使えるようになろうみたいなそんなもんだ。
「ほら、もっとこう…何かを絞り出すように!とにかく頑張って下さい!」
「何かって何だよ!?」
語弊があった。この天使説明が抽象的ってより表現が曖昧過ぎて教えるという行為が下手過ぎる。
とりあえず神力という物を何とか出そうとするが…。あんな説明で分かる筈も無い。
「ほらあれです、あれ!どがーーんみたいな!」
「指示語と効果音で説明すんな!何一つ分からん!!」
師事する相手を間違えたか…?いや間違っているんだろう。
ピピピ……!
「やべっ!時間だ!」
「浮影さんもっと頑張らなきゃ駄目ですよ?」
「あーそうだな…」
結局今日も進展無し…。
神力を使い切る為の人生だと言うのに未だにかけらも使えていない…。
「じゃ、今日はここまでだな。また来週頼む。」
「どうして浮影さんは神力を扱えないんでしょうねぇ…。」
とりあえず才能とかもあるかも知れないがあんたの指導も原因だろうなと密かに思う。
そして意識を失う様に俺は天界から去った。
そして気付くといつものベッドだった。
トントン!
「失礼します。」
メイドさんが入ってくる。名前は確かマイカさん。そして作業的に俺の朝の身支度を済ませてくれる。いつもいつもお世話になっております。
そしてドレスに着替え、食堂に向かう。最近女物の服に慣れてきた自分が怖い…。
「おはようございます。」
毎朝通り両親とアレス兄が先に来ている。メル兄は…まあ良いとして、ルナと俺がいつもどっちが先かという所だ。今日は俺の方が先に着いた。
食事が並べられる。モーニングセットの様な物でなく、朝から結構重い…。
毎朝通り何とか食べ切り、ティータイムに入る。
「アティ?ルナ?」
「「はい?」」
「お茶が終わったら一緒にアルマの元にいくぞ。」
一瞬思考が止まる。
「はいっ!」
ルナの元気な返事が聞こえる。
「ん?アティ?どうした?」
「いえっ!何でもありません!分かりました。」
どうしよう…魔法を習える事に舞い上がって完全に忘れていた…。こんな事なら昨日の時点でライブライブラリーでアルマ先生の事を調べておくんだった…。
後悔先に立たず。憂鬱な時間は迫るのみだった。