4‐4日々邁進
「お父様。私、魔法を覚えたいです。」
俺がそんな要望をしたのは、メル兄がこってり絞られぐったりしている夕食後のティータイムの時だった。
「アティッ!?何だってこんな日にそんな話を!?」
アレス兄が驚きの声を上げる。
自分でもおかしいと思う。しかし俺の好奇心は常識なんかでは止められない程に高まっていた。
父は一瞬考えを巡らせ、
「まず、お前は今日の夕方何を見た?」
声は否定の色より試しているといった風だ。
「中庭に空いた穴です。」
「それはいかにして出来た物か分かるか?」
「魔法…です…。」
質問の返答をミスれば魔法を習うのをやめさせられるだろうな…。そんなの嫌だ。
「そうだ。あれはメルが作ったオリジナル魔法の失敗の結果だそうだ。」
「名付けて『圧縮爆弾<プレッシャーボム>』だよ〜。」
ぐったりしていたメル兄が急に復活した。
「空気を読みなさい。」
母からの鋭い一言。
「はい…。」
結局ぐったりした…。
「あれで失敗ですか…。」
「そうだ。魔法には十二分に人を殺める可能性がある。今日のだって怪我人こそ出なかったが、最悪死人が出る可能性すらあった。それでも習いたいか?」
父からの厳しい発言。
「わ、私は…」
言葉に詰まる。
「私は、そんな強大な力だからこそ操り、制御していきたいと思います。」
苦しいか…?
「本当に制御出来ると思うか?」
返答に困る…。
「出来るかは…分かりません…。しかし…。」
「しかし?」
「やらなければ何も始まりません!何もできません!」
「では習う事を許そう。」
「えっ?」
「ここで自分なら大丈夫みたいな特別意識を持っているようならまだ早いと考えたが。それとも習いたく無いのか?」
「い、いえっ!」
あ、あっさり許可されたな…。
「魔法というのは常に危険が付き纏う。それを忘れない様にな。そして…ルナはどうする?」
「えっ?私ですか?……私もお姉様が習うなら習いたい…です。」
急に話を振られ戸惑ったがルナも習ういたいようだ。
「よし、じゃあ明日二人でアルマ先生に挨拶に行きなさい。」
「「はいっ!」」
この時の俺はまるで本当の子供の様に浮かれていた。
アティ達の去った後―――
「良いんですか?お父様?」
「何がだ?」
「アティ達の事ですよ!いくら何でも魔法を習うには早過ぎますっ!」
アレスは本当にアティ達が心配なようだ。
「大丈夫だ。きっとな…。それに自ら習いたいというのだ。その意気買いだと思わないか?」
「お父様がそう…言うなら…。」
不承不承といった様子の了解だった。
「それに私の信頼するアルマが教えるんだ。万に一つも問題は無い。」
あの男の魔法への意欲と実力は誰にも負けない。私の安心は何よりそこから来る。
「そうですね…。」
こいつはこんなシスコンで大丈夫か?
大丈夫じゃない問題だ。
そこにはシスコンを心配する親バカがいた。