24‐5奇人変人ときどき常識人
「やっと終わりましたね…。」
もう既に太陽は頭上高くに昇り、腹も減りはじめる頃だ。
「あぁ…、長かった…。」
間違っても悪い人じゃないんだが、ここまで長々と説教されると色んな意味で耳も痛くなるというものだ。
「そろそろ行こうか…。はぁ…、まだ昼間だってのに一日働き詰めだったみてぇな疲れだ…。」
確かに昼にしてはだいぶ疲れてしまった。
「そういえばストラドさんとウィズさん、エイミーさん、モーガン先生とボスとあと一人幹部っているんですよね?」
「まぁな…。えっと昨日の月ってどうだった?」
唐突な質問だった。
「確か…、三日月だった気がします。」
「なら一応会っても大丈夫だな。」
全く話が掴めない。
「一体何の話ですか?」
「それこそお前が気にしてる最後の一人、ディーナっつう奴の話だ。アイツは人狼の中でも変わり者で月の満ち欠けで性格まで変わるんだよ。」
確かに変わった人だな…。
「まぁ、間違っても今日の午前中だけで幹部全員と出会うなんて奇跡は起こんねぇ筈だがな。」
そう言ってストラドさんが扉を開けるとそこには一人の女性がいた。その姿を見てストラドさんが固まる。
「あの、ストラドさん。もしかしてこちらの方がディーナさんですか?」
「あぁ…、流石に俺も驚きを隠せん…。」
当のディーナさんはキョトンとした様子だ。
「こ、こんにちは…。ストラド君…。」
今にも消え入りそうなソプラノボイス。
「おう、ディー。まさかお前にまで会うとは思わなかった。」
意外と親しいのだろうか?ディーというのはおそらく愛称だろう。
「ゴ、ゴメン…。迷惑…、だったかな…?」
「いや、別にそんなことはねぇけど…。」
特徴を一言で表すなら儚げ。
亜麻色の髪が腰まで伸び、スレンダーなスタイル。身長は女性としては少し高めだと思われる。
「ところで、そっちの子はもしかして昨日ボスが言っていた子…?」
「フェイ・カタッグです。よろしくお願いします。」
とりあえず挨拶はしておく。
「フェイちゃんって言うの?ディーナよ。フフ、よろしくね。」
ニコリと微笑んで挨拶を返してくれた。普通に良い人そうだ。
「あれ…?でも、カタッグって…。」
「俺の苗字だが、娘でも妹でもねぇからな。」
もう妹という線にまで釘を刺しておく。
「じゃあ…、もしかしてお嫁さん…?」
少し恥ずかしそうに頬を染めて尋ねていた。コケそうになった。
「ンな訳あるかっ!!」
この人は少し天然が入ってるのかもしれない…。
「そ、そうだよね…。ごめんなさい…、私ったら、変な想像しちゃって…。」
顔がさらに赤くなっていく。
何か見てて可愛い人だ。
「良いって気にすんな。」
「そ、それじゃ、私もう行くね?」
そう言って顔を伏せて手を振りながら去っていった。
「普通にいい人でしたね。」
「少なくとも今はな、満月の時は結構扱いに困るんだよ…。」
満月の日か…、少し怖い物見たさで見てみたい気もする。