24‐3奇人変人ときどき常識人
「散々だったな…。」
ストラドさんから憐れみの言葉が掛けられる。
「えぇ、まったくです…。」
溜め息しか出てこない。
原因となったウィズは嵐のようにやって来て、すでに嵐のように去っていった。
今残るのは嵐の後の静けさだけだ。
いや、これこそが嵐の前の静けさだったのかもしれない。
今度こそ出ようとした。
気がつくと一人増えている。見知らぬ少女がストラドさんの裾を引っ張っていた。
「服引っ張んな。フェイ。」
「いえ、私じゃなくてその少女が…。」
その言葉にストラドさんが振り向く。
「今度はお前かよ…。」
「ストラド、昨日、約束。」
「あー、また今度な。」
「ダメ、ストラド、前もそう言った、逃げた。」
少女は身長約130cmくらいでだいぶ小柄だ。特徴的なのは薬品の臭いの染み付いたブカブカの白衣を引きずるように纏っていることだ。
髪の色は自然な感じの青。外見上からは判断しづらいが、種族は小柄な事からドワーフかと思われる。
「明日も来るのは間違いないからそん時で良いだろ…。」
「ダメ、今、コレ、飲め。」
取り出したのは泡立つショッキングピンクの液体の入ったフラスコ。
これは…飲めんだろ…。
「お前はこれ飲めんのかよ?」
「ダメ、私、意味、無い。ストラド、早く、飲め。」
ズイッと謎の薬品をストラドさんの目の前に差し出す。
「いや、絶対飲まねぇ。せめて効能教えろ。」
「うるさい、さっさと、飲め。」
そう言った少女は、身長差60cm以上の壁を驚異の跳躍力で乗り越え、ストラドさんの鼻をつまみ、口にフラスコを含ませそのまま飲ませる。
「テメッ…!本当に何飲ませやがった!?」
無理矢理飲まされたので少しむせながらしゃべる。
「あとは、10分、経過、見る。」
10分が経った。
「失敗…。」
残念そうに少女が語る。
「ストラド、身体、変化、無い?」
「疲れたっつーか、力が抜ける感じはあったな。ホントにアレは何なんだ?」
「身体、女にする。」
俺とストラドさんが凍りつく。
「失敗してよかったですね…。」
「まったくだが…、最初からンな物飲ませんな!!」
ストラドさんが少女の体をつまみ上げる。体が完全に宙に浮く。ジタバタと少女がもがく。
「離せ。成功、30分、戻る、多分。」
最後に余計な言葉が付く。
「多分で人の体で実験すんな!だいたい何でンな物作ってんだ。」
「変装、完璧。」
まぁ…、確かに変装としては完璧かもしれないな…。でも俺は分かるが男から女になった時の喪失感というか何と言うかは結構精神的にくる物がある。
少女を投げ捨てる様に地に下ろすと少女は即座に去っていった。
「えーと…、あの方は…?」
「うちのろくでなし二号。怪しげな薬品や魔法を研究してる。俺がココに来る前にはもういた。名前は確かエイミーだったはず…。研究室からなかなか出てこないからうちの奴でも一部はアイツを知らねぇし。」
やっぱココは奇人変人の集まりなのだろうか…。