23‐2早起きと初出勤
「おはようございます。ストラドさん。」
まずは、朝の挨拶を交わす。
「おう、おはよう。マスター、悪いが水を一杯くれ。」
主人は無言で頷き、水を差し出す。
「朝早ぇんだな…。起きたら隣にお前がいなかったもんだから少し焦ったぜ…。」
水を一気に飲み干す。
「すいません…。目が覚めてしまったもので…。」
主人の目がキランと輝く。
「おや、お二人は結局一つの布団で一夜を過ごした訳ですか?」
「ハァ…、別に変な事はしてねぇよ。」
呆れ気味にストラドさんが言う。
「そうですか…。少し残念です…。」
「ったく、どんな期待してんだよ…。」
そこからはさっさと身支度を済ませた。
昨日言われた通りギルドに顔を出さなければならない。
「んじゃ、マスター。まだ二、三日は使うと思うから部屋を最低一つは空けといてくれ。」
「はい、かしこまりました。二つ以上空くことはありませんけどね。」
少し楽しそうな笑顔で主人は言う。本当に何を期待してるんだか…。
「んで、ギルドに行かなきゃならんわけだが、どっか寄っときたい所とかあるか?」
そもそもどんな施設があるのか分からないし…。
挙げるとすれば着替えが欲しいのと風呂に入りたい。
しかしあまり我が儘は言いたくないので今は我慢する。
「いえ、特にありません。」
「そうか、んじゃあんまり気も乗んねぇけど行くか。」
朝の王都は実に静かだった。人影も疎らで、昨日の人混みと見比べると場所を間違えたかと思うほどだ。
ギルドへは徒歩十五分。立地条件は良い方の宿だと思う。
ギルドにたどり着き、その扉を開ける。今日からはここで今までと違う日々が始まる。
昨日は半分無理矢理連れ込まれたのもあり、そこまで意識しなかったが、改めて緊張してくる。
覚悟を決め、踏み出す。
「…静かですね。」
中は閑散としていた。
「そうだな…。少し早かったかもな…。」
今は感覚でだいたい7時くらい。早いっちゃ、早い。
「おーい!ボスいるかー!」
建物内で静かに響く。
すると奥の方から彼女は現れた。
「…誰よ?こんな朝早くから…。」
目をこすり、薄めの服に身を包んだ彼女は起床して間もない事が伺えた。
「あら、ストラド君じゃない。会合に遅れてきたかと思えば、今日は随分早いのね。適度という言葉が君には無いのかしら?」
少し不機嫌そうな口調だ。
「いやー、悪いとは思ってますよ。」
「だったら態度で示しなさいな。ま、良いわ。少し身支度整えるから待ってて頂戴。」
そう言って再び奥に引っ込んでいった。
今日改めて色々話すと言っていたので少し緊張する。
多分昨日の様に脅される事は無いと思うがやはり悪魔との対談となると気が重くなる。