22-3目指せ正社員
「あの…ストラドさん。ここがストラドさんのギルドなんですか?」
「あぁ、そうだよ。」
「あの女性が占いの館だって言ったので…。」
ここは占いの館なのか、ギルドなのか…。
「あぁ、ボスが勝手に趣味で占いやってる。しかも結構な確率で当たる。だがここは占いの館じゃねぇ。」
やっぱりここはギルドで占いの館は本当に自称だった。
「全くストラド君ったらどこでこんな可愛い娘引っ掛けてきたのよ。ヤキモチ妬いちゃうわよ?」
「あぁ、まあちょっとな…。」
「そういえば貴女名前聞いて無かったわね。」
名前…か。言っていいものかという疑問の視線をストラドさんに向けると良いんじゃね的な視線が返ってきた。
「はい、私アティーニャ・ラグラン・トピアーゼと申します。」
と言い終わるか終わらないかのうちに彼女はストラドさんの襟首を掴み上げていた。
「ス ト ラ ド 君?私一体いつ依頼人の娘をお持ち帰りしろって言ったかしら?」
力のこもった心底肝の冷える様な笑顔だった。
先程は疑念の眼で見ていた為気づかなかったがなかなかに綺麗な女性だった。
その細腕で大の男を吊り上げていなければもっと綺麗に見えただろうに。
「まあ、何らかの事情はあるのよね?」
気づくとストラドさんは解放されていた。
「当たり前だろ。」
少しむせながら返答していた。
「良かった〜。理由が無かったら貴方の命まで無かったもの…。」
うん、話通り目茶苦茶な上司だ。
「で、どんな理由かしら?」
今度はストラドさんより話しても良いのかというニュアンスの視線が送られる。
でも…
「それについては私がお話します。」
思い出すだけで涙が溢れそうになり、語るだけで胸が張り裂ける様な感覚に襲われる。
それでもこればかりは自らの口から言わねばならないだろう。
事の発端から顛末までありとあらゆる事を話した。流石に天界で知ったとか信憑性に欠ける物は言わなかったが語れる分だけ語った。
途中何度も泣き出しそうになった。何度も語るのをやめたくなった。
それでも言わねばならなかった。
「ふぅん…、貴女もなかなか苦労してるわね。」
「それで…その…、このギルドで雑用でも何でもしますので働かせていただけないでしょうか?」
彼女は少し困った様子を見せ、静かに口を開いた。
「大変気の毒だけど、残念ながらうちで雇う事は出来ないわ。」
やっぱり…、甘かったか…。
「でも、ちょっとだけ貴女に興味があるの。という事で特別救済措置!特別面接を行うわ!」
と言っても俺はもちろんの事、ストラドさんまでも何のこっちゃという表情をしている。
「ほら、もっと喜びなさいな。」
「や、やったー…。」
あまりに唐突過ぎて喜ぶべきなのかよく分からない。
「という事でここからは二人っきりで話し合いたいの。ストラド君は邪魔だから上に行っててね。皆が待ってるから歓迎でも受けると良いわ。」
「お、おう…。」
突然元気の無くなるストラドさん。
「じゃ、アティちゃんはこっちよ。」
そう言われ別室に通される。
面接か…、元の世界じゃ高校入試の時くらいしかやった事ねぇよ…。
緊張に跳ね上がる心臓の音を合図に面接が始まった。