22-2目指せ正社員
「さ、着いたわ。」
そこには二階建てくらいの特に変哲も無い建物。
「だいたい何をやっているところなんですか?ここは?」
何もできず連れて来られ、何一つ理解できていない。
「ここ?ここはね、占いの館よ。」
…占い?占いならこんな立派な建物じゃなくテント小屋で十分だろう。
「あ、信じてないわね。良いわ、占ってあげるから中に入りなさい。」
中に入ったらそれこそ何をされるか分かったものじゃない。しかし断ろうとも抵抗しようともするが結局無駄だった。
中に連れ込まれ、その女性と水晶を挟んで座って向かい合っていた。
「ほら、緊張しなくても大丈夫よ。別に取って食いやしないわ。」
というかだいたい何で占い師本人が売り子やってんだよ…。
「そーねぇ…。貴女くらいの年頃なら恋占いなんてどうかしら?」
それこそ俺に縁遠いものだろう。
「じゃあ、待ち人が来るかどうかでも占って下さい。」
「えぇ、了解よ。」
そういってこちらの顔をじっと見つめている。
「…あの、占わないんですか?」
「占ってるわよ?」
「じゃあ水晶とか使わないんですか?」
水晶に触れるどころか覗き込む事すらしていない。
「あぁ、それは飾りよ。良い雰囲気出してるでしょ?」
本当に立ち去ろうかな…。色んな意味で疑わしすぎる。
「はい、出たわ。待ち人は来るんじゃない?多分。」
いや、俺に聞かれても…。根本的に占いとして成り立っていない。
「あの…、もう少し具体的な結果とか出ないんですか?」
「いやー…、だって所詮占いよ?それに待ってるならそのうち来るでしょ、その待ち人も。うん、きっと来る確率の方が高いわ。」
ついに確率論まで取り出したよ…。これはもう占いじゃねぇ…。
「そうですか。ありがとうございました。今からその待ち人を探しに行くので、私はこれで。」
さっさと退散をしようとした。
「あ、いやいや待って待って。話があるの。」
話…?初対面だし、こっちにはそんな物無いんだが。
そのまま無視して自称占いの館から出ようとしたその時だった。
「今帰った!!スマンがまた出かける!!」
肩でゼイゼイと息をするストラドさんが飛び込んできた。本当に待ち人が来てしまった。
「って嬢ちゃん!?何でここに…!?」
「あんたはガキかっ!少し落ち着きなさいっ!」
あの女性から叱責が飛ぶ。
「いや、もう出かける必要は無くなったみたいだ。」
「あら、そうなの?」
「えーと、待ち人に会えました。とりあえずありがとうございました。」
まあ、この人は何もしていないが。
「貴女ストラド君の知り合いだったのね。いやー、本当にうちのがいつも迷惑をかけて…。」
「いえ、むしろ私の方が…。」
という事はこの人が例のボスなのだろうか…?
こうして奇妙な出会いをしたボス(?)と俺とストラドさんによる対談が始まった。