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番外編 断たれた未来

ルナシア視点です。

お姉様の死―――

それが伝えられたのは、お姉様が攫われた次の日だった。

その夜、私は一人自分の部屋で泣いていた。

「嫌、イヤ、嫌ぁ…。」

まだ私は現実を受け入れられなかった。

いや、受け入れようとしなかったのだろう。今も、これからも到底受け入れられるとは思えなかった。

脳裏に浮かぶのはお姉様との最後の光景。

お姉様は言っていた。

笑って、と。だけど笑えるはずが無い。

「嘘つき…、お姉様の嘘つき…!戻ってくるって、言ってましたのに…!」

あの時私が足手まといにならなければ、あの時脚にケガを負っていなければ、あの時お姉様を止めていれば、あの時…。

後悔ばかりがただただつのるばかり。

しかしいくら嘆こうが、もう二度とあの時もお姉様も戻ってくる事は無い。

分かっている。分かっているからこそ後悔するのだ。

生まれた時から、ずっと一緒だった。

隣にいて当然だった。

お姉様は常に誰よりも近かった。お父様やお母様、兄様達よりも誰よりも。

片時も離れる事は無く、まさに身を裂かれるような辛さ。

一人の人というよりは、自身の一部。

お姉様のいない世界。過去に考えた事など無かった。そしてこれからも考える事など無かったはずなのだ。

お姉様が今日いなくて、明日もいない、そしてこれからもずっといない。

そんな世界は私にとって存在しえないまやかしだ。

だから、私は想像した。いや、してしまった。

「こんな世界なら…、お姉様がいないならこんな世界明日なんていらない…!未来なんていらないっ!!」

未来無き世界。何も動かない、この先の無い世界。

そんな世界が私の祈りとともに出現してしまった。

「何…コレ…?」

そこは凍りついた世界。

そこには動く物はおろか、音さえしない生も死も無い世界。

いつもの見慣れた屋敷なのにそこには異様な光景が広がっていた。

お姉様が死んだという非日常のある一瞬から切り取られた絵の中にいるような感覚。

人は皆例外無く静止し、物が落ちる事も無く、当然動く事も無い。

これが夢か現実かは分からない。

どちらにせよ私自身がこの未来の無い世界を想像し、望んだのだ。

そして目の前にそれが実現している。

何の変化も無い世界に孤独を覚えなくもない。

しかしあの時ただ一人あの場に残ったお姉様も同じく思ったかもしれない。

それならばこれは自身への戒め。

現にお姉様は誰にも知られずに死んだ。

それならば私もここで誰に知られず朽ち果てる事も厭わない。



本当に何も無い世界だ。

机も人も等しく無機質な感触。そこには温もりも冷たさも無い。

もし…、世界を止めるだけでなく進めれたら…?

もし…、世界を『巻き戻せる』なら…?

頭の中で描き、全ての魔力を注ぎ込み、世界へと祈った。

「戻れ…、戻れっ!」

その言葉に答えるように世界が再び動き出した。

後ろ向きに歩いているような召し使い。

夜が夕暮れとなり、昼となる。

奇妙な光景だったが、心が躍った。

「これで…、お姉様を救える…!」

しかし、そううまくはいかなかった。

お姉様が攫われたのは、昨日の昼ごろ。

しかし世界は昨日まで行かず、今日の朝まで行き、何事も無かったかのように進み出す。

「何で…?」

いや、分かってはいた。動力源であった私の魔力が切れたのだ。

しかし希望はあった。

この力があれば…。

いつかお姉様を救える、救ってみせる。

その決意を胸に私と世界は再び未来へと歩み始めた。


ルナシア覚☆醒


けっきょく わたしが いちばん つよくて すごいんだよね

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