21‐2新たなるスタートライン
報酬の受け渡しはすぐだった。
ストラドさんが証拠品(後から聞いたら狼の尻尾)を渡し、報酬が出されると追い出されるようにして話は終わった。
確かに一平民にそれ以上の義理も無いので当然といえば当然の事だ。
そんな訳で今は腹ごしらえを済ませようとしているところだ。
こじんまりとしている知る人ぞ知るみたいな食堂で朝とも昼とも言えぬ飯だ。
出てきた食べ物は魚も含んだ海鮮料理。
何でもマリネシアの特産品らしく、非常においしい。
「これ、おいしいですね。何て言う魚ですか?」
何と言うか醤油に近い味付けのタレで炙られた魚だ。
「これか?多分ジュウムツメウナギだな。見た目が悪くて敬遠されがちだが、食ってみるとうまいだろ?」
タレの合間からギョロッとした目玉がこちらを覗いた様な気がした。
…何でこの世界はこういう下手物料理が多いんだろ。
おいしいんだけどさ…。
うん、きっと鰻の蒲焼きみたいな物だ。
味は本当においしかったので、何とか完食した。
途中口の中でコリコリとした食感があったがあれはきっと別の何かで決して目玉なんかではない筈だ。…そうだと信じたい。
「どうだ?流石にあんま上等なモンは食わせてやれねぇが、こういうのもうまいだろ?」
むしろ基本庶民舌な自分にはこっちの方が合っている気がする。
「はい、本当においしかったです。ごちそうさまでした。」
「んじゃ、腹も膨れた所でさっさと出発するぞ?」
やはり急いでいるのか一休憩も無しだ。
こうして再び旅が始まった。
マリネシアを既に後としこれといって何も無い平野が続いていた。
「そういえば時間が無い、時間が無い言ってますけど王都にはいつまでに行こうとしているんですか?」
忙しいというだけで内容を全く聞いてない。
無理せずゆっくり行くなら5日というところだ。
忙しいというくらいなのだから4日ってところか。
「3日だ。」
キョトンとしてしまった。いや…、えっと無理じゃね?
「えーと…。休憩無しですか?」
それでも無理なくらいだ。
「あぁ、睡眠時間も休憩に数えてほとんど無しだ。」
…流石に死ぬよ?
「…私がその前に力尽きますよ?というか普通に貴方も無理でしょう?」
どんな屈強な人間でも寝ないのは不可能だ。
既に俺は一日の完徹に疲労困憊な状態だ。
「なめんな、人間3日ぐらい寝なくても死なねぇよ。」
いや、死ぬから。つーか昨日から寝てないから更に無理な状態だ。
「別にお前は寝てもいいぞ?」
「…置いて行くんですか?」
不安になる、また心に影が差す。
「置いてかねぇよ。んな事したら後味が悪くて仕方ねぇ。」
少し安心した。しかし結局は問題解決になっていない。
「じゃあ結局どうするんですか?」
「お前を背負うなりして運ぶしかないだろうな。」
…想像すると何となく照れてしまう。
「でも大変じゃないですか…?」
「良いんだよ、気にすんな。何としてでもさっさと向こうに行かなきゃなんねぇんだから仕方ないだろ。」
ハァ…。何か本当に色んな人に迷惑掛けまくってるな…。