3‐1眠り姫発寝(はっしん)?
その夜はこれまた唐突だった。自分の部屋に一人でいた時だった。
《こんばんは。浮影さん。》
声の主の姿は…無し。聞き覚えはあるが。
「何だ幻聴か…。」
《無視して寝ようとしないで下さい。》
!!!
《今更素で驚かないで下さい。》
「それもそうか。で、姿が見えないけど何処にいるんだ?天使さん?」
《以前の天界とでも言うべきところです。神力があれば楽に入って来れるので来て下さい。》
「いや…入って来いって…。何?死ねと?」
《じゃあキーワードを作りましょうか。そうですね…。じゃあ『GO TO HEAVEN』としましょう。》
「やっぱり死ねと言ってるよね!?」
《気にしないで下さい。そしてさっさと来て下さい。》
「へいへい。『GO TO HEAVEN』!!」
唱えると同時に意識が揺らぎ浮かぶ様な錯覚…でも無いかも知れない物に襲われる。
とりあえずベッドの上だったから倒れてケガをすることはなさそうだ。
気が付くと事実5年振りとなるあの白い空間だった。変わる所も皆無なので記憶の通りだ。
「急な呼び出しですいません。」
見覚えのあるあの天使だ。
「いいよ、気にしなくて。それにしても久しぶりだな。」
「そうですか?すみません。永遠にも近い時間を生きる私たちには一秒も五年も大差が無いもので…。」
「あっ、そう…。ところで…」
まずは静かに沸々と怒りを貯める。
「はい…?」
「良くも女にしてくれたなあっ!?」
一気に怒りを爆発させる。コイツが男だったりしたらコレは相棒の分だーっとか言ってそいつの相棒を蹴り上げているだろう。俺は紳士なので女に手を挙げる事は無いが。
「大丈夫ですよ。とても可愛らしいですし。そんなの小さな事です。それともミジンコにでもなりたかったのですか?」
「何処をどう間違ったらその返答になる!?悪い事をしたら謝るっ!コレ常識!!」
「すみませんでした。とりあえず言い訳をさせて下さい。」
「よし、許そう。」
何か事情がありそうだ。
「私が貴方の出生情報を入力してた時です…。」
「うん?」
「貴方が天界を去り、貴方がいくらか有利な状況で生まれる様にしていたのですが…こんな時にまた『あれ』が問題を引き起こしてくれやがりまして。」
また『あれ』かっ!?
「ぎりぎり人型の補正は掛かったんですが…。」
性別補正等は掛けれ無かったと…。
「あんたも苦労してんだな…」
とりあえず労ってやろうか…。
「分かって頂けますか!?私もせめて貴方がミジンコに生まれない様に尽力致しました!!」
とりあえず今度『あれ』に会ったら犠牲となった相棒のためにも可能な限り殴ろう、そう決意した。