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19−1結ばれた不可侵

大人対子供とは言え、種族的な性能が物を良い、上手く撒けたようだった。

俺は走るのを止め、ゆっくりと歩き、やがて立ち止まった。

周囲を見渡し、目に映る光景はどこまでも黒い覆い尽くすような闇。

まるで闇が纏わり付いてくるようだった。

「どうして…?どうして信じていたのに裏切るの…?」

優しそうな顔で近づいて来て、そして信用したら手の平を反す。

そんな事なら始めから信じなければ良かった。信じれば裏切られるなら…、信じなければ裏切られないんだ。

あまりにも衝撃的な出来事の連続に人も現実も何もかも信じられなくなってきていた。

「もう…嫌だよ。こんな所…、早く帰りたいよ…。」

家族は俺を裏切らないでいてくれるだろう。

黒く塗り潰された様な森を抜けて、安心出来る、温もりのある家に戻りたかった。

しかし周囲に広がるのは静寂と暗闇。

世界にただ一人取り残されたかのようだった。

いつも誰かが近くにいた。

それは大切な人だったり、大切にしてくれる人だったり。

好いている人だったり、好いてくれている人だったり。

善意の人だったり、悪意の人だったり。

今は手を伸ばしても掴んでくれる人はおらず、呼び掛けても答えてくれる人はいない。

誰もいない。

俺は酷く心が脆くなっていた。

「助けてよ…、ねぇ…!誰か助けてよ!」

静寂に、孤独に耐え切れず、叫びをあげる。それは心の悲鳴だった。

誰に届くでもないその悲鳴は闇へと吸い込まれ、消えていく。

瞳からは雫がこぼれ、頬を濡らす。

しかし泣こうが喚こうが状況は好転しない。むしろ無駄な体力を消費している分悪化しているとだって言えるだろう。

家族の顔が頭に浮かぶ。

今俺がするべき事は嘆く事ではない。目の前の現実を受け入れ、少しでも光ある未来へと歩みを進める事だ。

今にも折れそうなちっぽけな勇気を振り絞り、再び歩み出す。やみくもにでもその先に光があると信じ、歩むしかなかった。

まず何よりもこの森を抜けねばならなかった。

この森には獰猛な獣だけではなく、俺を追っている人までいる。

そして道は疎か、方角まで分からない。

身につけている物は雨に濡れ、少しの間火に当て乾かした生乾きの服と外套、唯一の武器は拳銃。

食料の類は一切無く、森から無事抜け出せるかすら怪しい装備だ。

時刻は草木も眠る丑三つ時…かは分からないがとにかく深夜。

昨日は十二分に寝たから眠気は殆ど無い。

(…そっか、一日しか経ってないのか。)

二、三日前の事がまるで遠い過去の様に思われた。それほど日常とは掛け離れた出来事が連続して起きた事を改めて実感する。


過去の事じゃない、またその日常を取り戻す為に進んでいるんだ。


なら、最後の最期まで抗ってやる。

運命を変えれるのは他ならぬ俺だけだから。


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