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18‐6暗闇の森林

横になった、のは良いのだが眠れない。理由としては何よりも極度の緊張。

今は守ってくれる人がいると言えど狼に襲われた恐怖、いつ現れるとも知れぬ誘拐犯がまぶたの裏に焼き付い離れない。


ジリリリッ!!


突如として通信玉の着信音が鳴り響いた。

「…誰だよ、こんな時間に。起きちまうだろ…。」

そうぼやきながらストラドさんが通信に出た。

「はい、もしもし?げ、ボス…。あ、すんません。え?今ですか?アークの森です。いや、すんません…。」

電話の相手はストラドさんの上司か何かのようだ。

場所でも聞かれたのだろうか?それよりもボスという言葉にあの悪魔を思い出してしまった。

そんな筈は無い。偶然出会っただけならまだしも彼は助けてくれたのだ。

「いや、ホントすみませんって。後五日もありゃ戻りますんで。はぁ?三日!?いやいや、そんなのギリギリじゃないですか!?」

多分収集とかいうのにさっさと来いってところか?

「ホント勘弁して下さいよ。こっちはガキ連れてかなきゃいけないんすよ?」

俺の事か…。見事お荷物になっているようだ。

「え?いや、俺のじゃなく森で見つけた奴です。だから森で見つけました。え、良く分からない?」

…まあ、確かに突然森で子供見つけたと言われても何の事かさっぱりだろう。

「え〜と…、狼狩りで森に入ったらボロボロで狼に襲われていた子供がいたので保護しました。この報告で良いですか?え、コイツの特徴?」

俺について聞かれてるのか…。

「えーと…、髪は銀髪で肩よりちょっと長いぐらいの十二歳前後で…。あ、はい女です。それで…、はい、獣人です。あ、ウィルディア出身だと言ってました。はい、白い虎の耳で、…良く分かりますね。」

何だ…?雲行きが怪しくなってきたぞ?

「は…?冗談でしょう?…正式な依頼ですか。報酬は?へぇ、悪くない。流石羽振りが良いですね。」

嘘だろ?ストラドさん…?助けてくれたんじゃないのかよ…。

人を信じたくても現実がそれを否定する。

また裏切られる。数年前のトリークとつい数時間前のトレイ先生。過去二度に渡っての事件。その二つが今のストラドさんに重なる。


また…、裏切られる。


裏切り、その単語がグルグルと回る。

信じなきゃよかった。信じなければ落胆も小さかったのに。

「はい、コイツをマリネシアまでですね。えぇ、はい…。当然成功させて見せます。」

そういうとプツッと通信を切った。

ストラドさんが近づいてくる。一度寝たふりをする。

「コイツが公爵様の娘ねぇ…。」

寝たふりをしているので表情は伺えない。

堪らなく悔しかった。自分を裏切り続ける現実が、信じていた者が手の平を反す現状が。


だけど…、もう吹っ切れた。

思考を放棄した。

また裏切ろうとしてるなら結局この人だって敵だ。あれこれと考える必要は無い。



…まずはこの人の手から逃れなきゃならない。

さっきの狼との戦いを見る限り俺では正面向かってどころか後ろを取っても負けるだろう。

体力は休んだ分もあり、だいぶ回復していると思う。

多分相手はただの人間だ。ならば年齢やその他諸々を考慮しても全力疾走で逃げ切れる筈である。


「ふぅ…、ま、考えても仕方ねぇか…。コイツが何者にしたってやることにゃ変わりねぇしな。」

そう言ってストラドさんは焚火の前に戻った。

それから30分程経つとストラドさんがうつらうつらとし始めた。

もう少しだ。俺はまさに虎視眈々と機会を伺っていた。


さらに30分が経った。ストラドさんは完全に居眠りを初めている。

俺はそっと立ち上がり、ストラドさんとは反対方向へとそろそろと歩きはじめた。


パキッ!


「…ッッッ!!」

俺は小枝を踏み付けるという何とも典型的な馬鹿馬鹿しいミスを犯した。

「あ?どうした?」

ストラドさんも物の見事に起きてしまったようだ。

こうなったら仕方ない。

俺は全力で走りはじめた。

「あっ!おいっ!?待て!!」

と言われても待つはずも無く、俺は遠く、より遠くへと走った。


俺の前には先の見えない暗闇しかなかったとしても。


さて、アティの行く末や如何に?


という訳で一週間ぶりの更新でした。

主人公をイジメ過ぎて主人公が人間不信に…。

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