隠れ家レストラン まんまと戦場に行かされた件スピンアウト 散文詩
隠れ家レストラン レストランから昭和十七年の神戸へ まんまと戦場に行かされた件抜粋
ドラマを詩のように書いて能の幽玄ぽい世界を作りました。散文詩として発表します。
八十島海人と奥山紅葉が、隠れ家レストランから昭和十七年の神戸に出ます。
これで、興味が出たら本編もお楽しみください。
あの日(といってもいつも同じ日の同じ時間である)、八十島海人は因幡姉妹が通って来た松林の砂の露地を、奥山紅葉に案内されて抜けていく。
にわか雨も降らず、風も吹かず、姉妹の登場もない。
だから月夜の虹もない。
松が段々高かくなり月が隠されていくと露路は薄暗くなっていく。
すっかり暗くなってから十数歩も歩くと露路は行き止まる。
そこが時間が進む昭和十七年の世界への出入口だという。
やがて、午後八時
隠れ家レストランで見たと
その同じ満月が
松の梢から顔を出し
煌々と照ってくる
その光が
行き止まりの薄暗い
露路の砂地に当たる
と、その砂地の砂一つ一つが
星々のように光りだし
銀色の鏡となる
銀鏡は止水の池のように月と空を映した
その銀鏡の夜景がさーっと下に流れたのは
鏡面が垂直に立ったからだった
気付くと
行き止まりの露地は
どこかの舗装道路に面して
孟宗竹の生える
小さな竹藪の切れ目になっていた
藪の切れ目から紅葉に続いて八十島が出る時、重く湿った潮風に背中を押された。
振り返ると孟宗竹の竹藪が一坪ほどポツリとあり、遠くに月に照らされる松林が見えるだけだったという。
『僕は、質問したかったし、感想も言いたかった。 しかし禁じられとった。
驚きを伝えようと、驚いた顔を殊更に作って、紅葉さんの顔を見つめて言葉を我慢しとった。
さぞ、おもろい顔しとったやろな、僕。
よくぞ紅葉さんが噴き出し笑いしなかったことや』
どのくらい待っただろう。
八十島は、何時までここにいるのかと紅葉に聞きたくなった。
そこに前照灯を点けた小さな車が発動機音とともにやって来る。
遠くで打ち寄せる波の音が聞こえる。
周りはひっそりとしているので発動機の音と波音だけが響く。




