8番目、ダブルデート。94
楽しみがなければ耐えられないと宣言したベル様。
かなりオーバーではないか?
と思ったが、全然オーバーではなかった。
嵐がすごいと言ってた翌日、ものすごい風の音で目が覚めた。
まさかいきなり嵐って!そして本当に嵐のレベルが違う!!ハリケーンか?!ってくらいだ。あと、いつの間にか屋敷の中庭や畑までドームのように完璧に魔法で守られていて、そっちにも驚いた。
「凄すぎる‥」
強い風にこれでもかと外の木々が揺さぶられている光景に、もう目を見開くしかない‥。身支度の手伝いに来てくれたレーラさんに話をすると、ニッコニコで笑った。
「今日は風だけなので良かったですわ。雨と風が合わさるとそれはもう大変ですからね!けれどその分魔物も静かなのでベル様もお屋敷で仕事ができます!」
「家でも仕事‥大変だ」
「書類仕事も山のようにありますからね!こういう時にまとめてやって頂かないと!」
そうかぁ〜〜。
私もお仕事手伝えればいいんだけど‥、機密情報もあるから難しいだろうしなぁ。
「‥じゃあ、お菓子でも作ろうかな」
小さく呟いた私の言葉を聞きつけたレーラさん。
ベル様との朝食後、「すぐ作りましょう!!」と、速攻で私をキッチンへ連れ去り‥もとい誘ってくれた。魔族って行動が早いな。
キッチンへ行って食材を確認すれば、少し早めに収穫しておいたカボチャが目に入った。
ポンポンと小さく叩いてみれば、いい感じの音がする。
ちょっと早いけど、ケーキにすればいけるかな?できるだけしっかり緑色になっているカボチャを一つ持ち上げた。
「折角収穫したカボチャもありますし、これを使ってパウンドケーキにでもしましょうか」
「まぁ!素敵ですわ!」
「久しぶりに作るから上手くできるかわからないんですが‥」
「大丈夫ですわ!リニ様が作られた物なら石でも食べますよ!」
「‥‥石は、製造できませんねぇ」
しかし以前私がお菓子を渡したら、宝物のように扱ってくれたことを思い出すと、やりかねない‥と、思ってしまう。「好き」だなんて言われたことはないが、すごく大切にしてくれることはわかる。‥元々すごく優しい方なんだろうな。
早速白いエプロンを借りて着てから調理開始である!
カボチャを大きな包丁で早速ざっくりと切ろうとすると、レーラさんが目を見開き、
「リニ様!!危険です!!!」
「っへ?」
「そんな大きな包丁を持たれては危険です!それは私めが‥」
「いやいや、そんなカボチャを切るだけ‥」
そう言いかけた時、ふっとベル様の匂いがした。
「ん?」
振り返った瞬間、私の手から包丁がスルッといつの間にか後ろに立っていたベル様に抜き取られた。
「べ、ベル様!??」
「‥‥ナイフや包丁は危険だ」
「いや、でも野菜が切れないんですが?っていうか、お仕事は?!」
「リニが危険だとレーラが言っていたので駆けつけた」
「どんな地獄耳ですか???」
ベル様は私の「地獄耳」発言に目を丸くして、「じごくみみとはなんだ?」と、聞いた。‥そっか、この言葉はこの世界にはなかったか。とりあえず「よく聞こえる耳」と説明をしたら、何故か誇らしげに微笑まれた。何故だ。
「ともかく、何か切りたいなら俺に言ってくれ」
「‥天下の軍団長様にそのようなことをお願いする訳には‥」
「このカボチャを切ればいいんだな?」
「あ、はい。ベル様と収穫したカボチャでケーキを作ろうと思って‥」
私の言葉にベル様は目を見開き、こちらをまじまじと見つめ、
「あの、カボチャ‥か?」
「はい!まだちょっと甘さは足りないかな?とも思ったんですが、家でもお仕事されていると聞いたので‥。お茶の時間にでも召し上がって頂こうかと」
そう話すとベル様は耳の先を赤くして、目をウロウロさせ、
「そ、そうか。それでカボチャを‥」
照れ臭いのか、ベル様は私が持っていたカボチャをまるで豆腐を切るようにサクサクと切ると、「これくらいでいいか?」と、聞いてくれた。
待って?!その包丁どないなってるの?
ミスリル?オリハルコン製??包丁を受け取ろうとすると、レーラさんが光の如き速さでベル様から受け取り、その代わり私の手には木ベラが手渡された‥。
ベル様は耳の先を赤くしたまま、
「‥ケーキ、楽しみにしている」
と、言うと一瞬で消えてしまった‥。
家の中で転移を使ったんかーい!突っ込む私の手には、いつの間にかしっかりと蒸されたカボチャが入ったボウルが!
「あ、あれ!?」
「しっかり蒸して柔らかくしてあります!」
「最早3分も掛からないでケーキができそうだ‥」
何もかも準備万端なケーキ作り。
これでいいのか‥?と、言う疑問をひとまずボウルの中でかぼちゃと一緒に丁寧に潰すことにした。
相変わらず大荒れな外を見ながら‥。




