8番目、ダブルデート。91
今日は一日中、湖から精霊が黄泉へ帰るらしい。
朝からお化けは見えるものの、ベル様もお仕事が休みだし、一緒にいてくれるので私は無敵である。あ、ちょっとだけ嘘。恋をした為に動悸、息切れ、急な心臓発作が起こるのでそこだけ要注意だ。
二人でお昼を中庭で食べつつ、湖を見れば次から次へと湖へ消えていくお化け。
「なんだか圧巻な光景ですね」
「そうだな。家族を亡くしたばかりのやつは、あの光景を見て踏ん切りがつくらしい」
「‥確かに。来年また会えるって思えますしね」
「ああ、だがもう来年はお菓子を山のように用意しておく。追いかけられては堪らないからな」
‥それは暗にお母さんのことを言ってるのかな?
チラッとベル様を見れば、静かに頷き、
「お菓子を譲るのはもう嫌だからな」
「‥また作りますよ」
「そうか!」
嬉しそうに小さく微笑むベル様の、心の破壊力。
ドスッと何かが胸に刺さった気がする‥。お菓子一つでこんなに喜んでくれるならまた是非とも作ろう。そんなことを考えていると、
「‥二週間後になるが、その何処かへ出かけようかと思ってる」
「っへ?」
「視察や城に要塞‥と、落ち着いて出かけたことがないしな」
「そんな事は‥、この間は町へ行って‥‥追いかけられましたね」
「ああ。だから今度こそはゆっくり楽しめる場所へ行こう」
「あ、ありがとうございます」
というかそれってデート、ですかね?
い、いや、前回だってデートといえばデートだ!!‥‥精霊になったベル様のお母様に追いかけられたけど。だけど今度こそ普通のデート!いや、まだお互い告白もしてないからお出かけ‥に、なるのか?
結婚は仮免許状態だし、お互いに「好き」とも言ってないし、我々って本当にどんな関係なんだろ。よくよく考えれば、いきなり15年ぶりに再会して結婚だもんな〜。不思議な関係でしかないな。この関係が半年後にはどうなっているのやら‥想像もできない。
「リニは、どんな場所が好きだ?」
「え?」
「せっかくなら、その、好きそうな場所へ行こうかと‥」
「ベル様‥」
ちょっと心臓に悪い一言をいきなりぶち込まないでもらえませんかね?
嬉しいのと、ときめきで心臓が破裂するかと思ったよ。初恋って怖い!!これを何度も体験している人って、心臓がどれほど強いのだろう。きっと鋼だ、鋼。って、そこじゃない。場所だ、場所を考えようと、頭を切り替えたその時、
「リニさーーーーーん!!!」
「「ん?」」
なんだか聞き覚えのある声が聞こえたぞ?
声のした方を見れば、シュナさんとフィプスさんがこちらへやって来たが、シュナさん半泣きである。
「シュナさん!どうしたんですか!?」
「リニさん!!助けてください!!」
「ちょっと待って下さい!キルシュナ様!!リニ様を抱きしめちゃだめです!潰れちゃいます!!」
フィプスさんがすんでのところで、私とシュナさんの間に入って止めると、半泣きのシュナさんがハッとした顔をして、「そ、そうでした!」と、我に返った。‥すみません、潰れちゃう人間で。
「えっと、シュナさんなにかあったんですか?」
「はい!!聞いて下さいよ!ヴェリ様に「デートをしよう」って言われたんです!!」
「っへ?」
デート‥って、妃候補になったし当然では?
思わずベル様を見れば、静かに頷き、
「キルシュナ、デートの何が問題なんだ?」
と、聞くと、シュナさんは顔を真っ赤にして、
「だってデートですよ?!ふ、二人きりなんて無理です!恥ずかし過ぎて死んじゃいます!!」
「‥‥お付きの者がいるから二人きりではないだろ」
「ヴェリ様ですよ!?あの手この手の口八丁でお付きの者をさっさと下がらせてしまうかもしれないじゃないですか!!」
「‥‥王様なのにとんでもない言われようですねぇ」
私とベル様で顔を見合わせたが、シュナさんにとっては二人きりはとてもじゃないが無理オブ無理だそうだ。確かに王族のお誘いを断るのも難しいしなぁ‥。シュナさんは握りしめていたハンカチで涙を拭い、
「次回のデート、リニさんとオルベル様に一緒にいて欲しいんです!」
「「え?」」
「お願いです!!ご夫婦のお二人が一緒にいてくれたら私、安心してヴェリ様とお話できると思うんです!だから一緒に同席して下さいぃいいいいい!!!」
「「ふ、夫婦‥‥」」
そのヴェリ様に仮免許中って言われてるんですが‥。
私とベル様は再び顔を見合わせると、少し耳の先が赤いベル様が小さく咳払いした。
「た、確かに俺達は夫婦だが、その、ヴェリが嫌がるのでは?」
「説得します!!二人じゃ無理だって説得しますから!!お願いしますぅうう!!」
「えーと、時にそれはいつの話で?」
「二週間後です‥」
タイミングまでバッチリですね?
ベル様はうんざりした顔で「絶対無理だと思うぞ」と、シュナさんに言ったが、翌日ヴェリ様から直々に手紙が届き、
『ダブルデートしよう!!』
と、書いてあり、ベル様はものすごい勢いで手紙を床に叩きつけたそうだ。
書いてて思ったけど、これすごく終わる気配が見えないな?
そしてクリスマスイブー!!




