8番目と、適材適所。89
ベル様と一緒にさっきいた部屋へ戻ると、そこにはエルザ様が座っているだけ。
「あれ‥、リリオン様は」
「怒られるだろうから帰るって言って、本当についさっき帰ったわ」
「‥‥あいつ」
ゆらりとベル様の後ろから不穏なオーラが出た‥ような気がする。
でもベル様が怒るのは目に見えてたからね、そりゃ逃げるよね。私はベル様を見上げて、
「リリオン様、ベル様を心配していたんで‥。あのお嬢さん達もリリオン様のお陰で帰ったはずだし、良かったということで」
「‥‥あれは、リニのお陰だろう」
「え?」
「‥リニが、つ、妻としてその、注意してくれたから」
「えっ!?」
もしかして「ベル様の妻だけど、なんか文句あんのか?」って言ってたの聞いてたの?!驚きつつ、そういえば後ろでベル様ってば片膝ついて赤い顔をしてたな?って、思い出したら全部納得した。やっぱりあれ照れてたんじゃん!!私まで顔が赤くなると、ベル様が小さく、
「‥ありがとう」
と、言うので目を丸くした。
「私、特に大したことはしてませんが」
「‥兵も、俺も、心配してくれたんだろう?」
「それはそうですよ!あんなに大きな魔物相手に戦ったんですよ?」
そりゃ心配するのが普通でしょ?
私の言葉にベル様と、横で聞いていたエルザ様が小さく微笑んだ。
「それが結構当たり前じゃないのよね〜!強いのが魔物を倒すなんて当たり前!って感じだからね。こっちが泣き言を言ったら責められちゃうのよ」
「え!?そうなんですか?!」
そっちのが驚きなんだけど!だってあんな大きな魔物だよ?私が何百人いても勝てない相手に立ち向かってくれたのに、なんで戦ってくれた人を責めるの?思わずベル様を見上げれば、眉を下げて笑った。
「強いものが強者だが、強い故に戦う行為は当たり前とされる。それは、仕方ないことだ」
「で、でも、シュナさんの領地のデリーさんは助かったって喜んでましたよ?」
「ああ、領民はね〜。でも貴族とかは違うのよ!あいつら戦うのは下賎な奴って感じだから!」
「倒してもらってるのに?!どんな頭してるんですか!」
意味がわからない!私はもう頬を膨らませて怒るだけじゃ足りないぞ?!
ムキーッと怒ると、エルザ様が私の頭を突然ワシワシと強く撫でた。
「やだーーー!すっごくいい子!そうよねぇ、そう思うわよねぇ。安心して、大半の魔族はそう思ってくれるからあたし達も頑張れるのよ。でもこれだけ怒ってくれるとちょっとスッキリするわ〜」
「エルザ様‥」
「あの女の子達もねぇ、親に言われて止むに止まれず来てるから、貴方に強く言われて逆に戻りやすかったと思うわ。嫌な役させちゃってごめんなさいねぇ」
「そんな‥」
どっちみち一番嫌な役回りをしているのは、ベル様やエルザ様じゃないか‥。私って、本当に無力だ。しょんぼりする私を見て、エルザ様はポンポンと私の頭を優しく叩いた。
「兵士の安否を気にかけてくれる人間ちゃんなんて、なかなかいないのよ?それだけで、兵士達もあたし達も十分嬉しかった」
「‥ついでに私も戦えれば良かったです」
「適材適所ってもんがあるからね〜。それにオルベルが絶対強くても許さないわよ。ね?」
エルザ様の言葉にベル様が速攻で頷き、
「‥リニに近付く間も与えない」
決意に満ちた声でそう話した。
ありがたいけれど無理はしないで欲しい。と、エルザ様がポンと手を打った。
「さ、ベヒモスはもう大丈夫だし、お嬢ちゃん達はようやく家に戻っていった。あとはなんとかなりそうだしオルベルあんた一度家に戻りなさいよ。ずっと働きっぱなしでしょ」
「‥だが、」
「新妻ほっぽって仕事ずっとしてたら捨てられちゃうわよ!」
エルザ様の言葉に慌てて私を見つめたベル様。
捨てない、捨てないから。今さっき恋心を自覚したってのに捨てませんから。ブンブンと首を横に振れば、ホッとしたように私を見つめたベル様。
‥本当に、好きって一度も言われたことないけど、なんでこの人は私と結婚したいと思ったんだろう。不思議過ぎる。
「では、書類は家に送ってくれ」
「わかったわ。あと周辺の確認はもう一回しておく」
「頼む。他の領地の情報も追加で」
「そりゃね。キルシュナとユプスにも言っておいてあるから、その辺は安心して」
テキパキと事後処理をする二人、格好いいなぁ〜。
私はそういえば仕事らしい仕事、まだこの世に生を受けてやったことがないから、ちょっと羨ましい。いくつかの書類を持って、ベル様が私の近くへ来ると、
「それでは、帰るが‥、ちょっと別室へ行くか」
「‥‥‥そうですね」
エルザ様の前でぺったりくっつくのは流石に恥ずかしいしね。
と、エルザ様がニヤニヤした顔で、「くっ付いて帰ってもいいのに〜〜!」と、すかさず言った。知ってるんかーい!!でも知っていても、恥ずかしいから無理ですけどね!?
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