8番目は恋をする。88
ベル様と屋上で抱き合うようにくっ付いているが、ようやくこれ病気じゃなくて恋をしているのでは?!と、気が付いた。
なにせ初恋もまだだった私。
確信は持てないけれど、多分お姉ちゃん達から聞いた話を思い出すと、これってそういうこと‥だと思う。なるほどこれが恋かぁ!と、驚きと共に納得だ。しみじみと感動しているていると、ベル様が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「リニ?」
「あ、すみません、つい考え事をしてました‥」
「そ、そうか、あの、それでだな。手を出せるか?」
「へ?」
「キスを、しないと、その、離れないから‥」
そうだった〜〜〜〜〜〜!!
リリオン様、本当になんて呪いを掛けてくれたんだ。
恋をしていると知った瞬間にキスとか!人の心臓、どうしてくれるんだ‥。チラッとベル様を見上げれば、照れ臭そうな顔にぎゅうううっと心臓が痛くなる。照れ臭いし恥ずかしい!
う、うわ!?恋ってやっぱり病気じゃない?!
慌てて俯いたけれど、それにしたってこの現状をどうにかしなければ!自分の体の現状確認をすれば、ベル様の胸の辺りに手を付いている。こ、これって離れる、のか?ググッと手を引っ張ってみるけれどビクともしない!だ、ダメか〜〜!
そっと顔を上げて、
「あのっ、手が取れなくて‥」
「そうか‥。俺もその、マントを巻きつけてしまったんで離せなくて、」
「え」
じゃあどうやったら離れるんだ?
心臓はドキドキ‥だったけど、ちょっとひやっとしてきたぞ?
ベル様なんて忙しいから、このままここにずっといる訳にもいかないだろう。どうしよう‥、どうしたらいい?
「額に‥、キスをしてもいいだろうか?」
「っへ?」
「す、すぐにしたら離れる!く、口は誓ってしない!!」
「誓って‥‥」
そうでしたね、私達仮の夫婦だしね。
それが今になって良かったのか、悪かったのか、ちくっと心臓が痛むけれど、今はそれどころじゃない。照れ屋なベル様がそんな提案をするくらい忙しくて大変なのだ。恋心を自覚した身だけど、ここは双方の為にもキスはしておかないとだろう。
私は小さく頷いて、
「よろしくお願いします!!」
首をぐっと上げて、目をぎゅっと瞑った。
だって目を開けてキスなどされたら、今の私では心臓が破けてしまうこと必須だ!
が、すぐにキスをされるかと思ったのに、ガチッとベル様の体が固まったのがすぐにわかった。だ、だよね〜〜!照れ屋だし、指にキスされた時も真っ赤だったし‥。
と、ふんわりとベル様の匂いが近くなった途端、おでこに柔らかい感触がして、パッと体が離れた。
「ベル様、すみませ‥」
目を開けながらそう言いかけると、さっきまでべったりくっついていたのに、3mくらい離れた場所で真っ赤な顔で立っているベル様。
え、どんだけ後ろへ飛び退いたの?
驚いていると、ベル様は目をそれはもうあちこち泳がせながら、「す、すまない!そのっ、今後はリリオンに絶対するなと言っておく!」と、遠くから私に声を掛けた。‥うん、優しい人だなぁ。あれだけ大きな魔物をやっつけたのに威張りちらすこともない、すごく優しい人だ。
それだけでベル様を好きになって良かったなぁって思う。
「ベル様、距離に気をつけつつ部屋に戻りましょう」
「そ、そ、そうだな」
手と足が交互に動くベル様に小さく笑って、お互い距離を取って要塞の中を歩けば、兵士さん達がちょっと物珍しげに私達を見ている。ど、どうも〜〜、夫(仮)がお世話になってます〜みたいな顔で小さく会釈しながら少し先を歩くベル様の背中を見つめた。
そういえばそもそもそんな照れ屋なベル様はなんで私と結婚したんだ?
リリオン様の本にもあったけど、運命の番だったとしても人間だったら諦めることもあるってあった。と、いうことは私とベル様は運命の番ではないんだろう。
じゃあ私と結婚するメリットって、なんだ?
身分が欲しくて私と結婚したわけでもなさそうだし。
そうなるとますます不思議だ。私が得意なことは、家事全般、ちょっとの事務作業、あとは野菜を育てること‥、そして元気!くらいしか自分の魅力として思い浮かばない。
さっきのエクリアさん達のように綺麗でもないし、エルザさんやシュナさんのように強くもない。魔族にとっては非力で、守るべき存在‥のような私に、メリットってあるの?というか結婚ってメリットでするの?
「リニ?」
「はい!!」
ぐるぐると考えていた私はハッとして、目の前にいたベル様に大きく返事をしてしまった。うう、恥ずかしい‥。そんな私に、ベル様は目をまたウロウロさせて、
「‥今日は、来てくれて、ありがとう」
「え?」
「‥会って、話すのは、やっぱり嬉しいものだな」
ふっと照れ臭そうに微笑んだベル様に、心臓が絶対自分史上最高に鳴った。
恋って、心臓に悪い!!!
た、楽しい!!!!




