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8番目の結婚(仮)6


突然王城へ連れて行かれ、もしかしたら戦うことになるかも‥などと発言されて、私が平常心でいられると思っているのだろうか。


否!!!めちゃくちゃ緊張している!

だってちょっと前まで私は島にいて、ここへ来てまだ1時間くらいしか経っていない。しかも15年ぶりに再会した夫になるであろうオルベル様とは、まだ全然会話もしてない。



何の食べ物が好きか、どんなことをするのが好きか、私は何も知らないのだ。



そこへ来て戦うかもしれないなんて、不安と緊張で胃の腑が痛む。

そんな私を知る由もないオルベル様は、ずんずんとその大聖堂のような場所を奥へ奥へと進むと、大理石か何かできてる?というくらい立派で大きなドアの前に立った。



「オルベルだ!結婚の報告へ参った」



初めて大きな声で話すオルベル様にびっくりした。

そんな大きな声出るんだ。さっきから静かに話すから、そんな喋り方なのかと思ってた‥。驚いている私をよそにドアがゆっくりと開き、オルベル様と一緒に室内へ入ると、その奥に一段高い場所に白い大きなヤギのような角が二本頭上にある、長い金髪の髪の青年が大きな椅子に座っていた。



あ、もしかして、王様?!

慌てて頭を下げると、頭上から笑う声が聞こえる。


「オルベルと違って妻になる子はとても賢いね。初めまして、王のヴェリだ。よろしくね」


ひーーーー!!やっぱり王様じゃん!!

っていうか、なんで衛兵とか全然いないの?王様なのに!!王様が目の前にいきなり出てくるなんて想定外だよ!完全にパニックになっている私をよそに、オルベル様はじとっと王様を睨むように見上げた。



「‥‥結婚の報告へ来た。リニ・プレファンヌとオルベル・デヴォンはここに結婚をする」

「えー?リニは本当に結婚したい?」



突然の爆弾発言に、私は頭を下げたまま固まった。

ん?!なんて言った!?これって聞き返すべき?混乱している私の横で、オルベル様はチッと舌打ちをして、


「お互いに納得した上で決めたことだ」

「本当にー?だって彼女はまだ18歳でしょ。僕ら魔族からしたら赤ちゃんと変わりない存在だよ。まだまだ親の元で庇護されるべき存在だよ?しかもお前のような魔族に結婚を申し込まれたら普通の人間は断れないよね?」


オルベル様が一瞬言葉に詰まった。

お、ちょっとはそう思ってたのかな?ヴェールと花で囲まれた私は視線だけオルベル様を見上げると、目の前のヴェリ様は面白そうに口角を上げた。



「お前は本当にリニに選ばれてないだろ?でもまぁ、この国の為に先陣を切って戦っているからね。結婚は認めてやろう。でも半年間は手出しは禁ずる。そうして半年後にまた王城にリニを連れて来い。その時、彼女がお前と別れたい、一緒に生活は無理だと言ったら離婚するように」

「なっ‥!」



オルベル様は私の手をぎゅっと握ると、


「何故そんなことを勝手に‥」

「勝手にね‥、それはお前もだろ。ちゃんとリニのご両親は心から娘を送り出したのかい?お前は少し直情的だからね。例え小さな島国の娘だとしても敬意を払うことは大切だ。リニ、なんなら今すぐやめてもいいがどうする?」


ヴェリ様の言葉に、オルベル様がバッと私の方を振り向いた。

どこか焦ったように黒と赤の瞳が揺れて、私の手を逃げないでくれとばかりに縋るその大きな手を見て、私は反射的に、その手を握り返した。


と、オルベル様はそれは驚いたように私を見た。



‥いや、なんかさ、15年ぶりの再会なのにサクサク進められちゃって、私も驚きの連続だったけどさ、でもレーラさん曰くずっと楽しみにしてたんでしょ?このドレスを見るに嘘ではないと思う。そこを、はいさよなら〜って、ちょっと寂しいよねって思ったんだ。あと魔物を狩ってきたってのも、ちょっと気になる。



私は「発言をお許し下さい」と、前置きを入れてからゆっくりと顔をあげた。


「‥結婚は、せっかくなので致します。ただヴェリ様の仰る通り、オルベル様のことを私はまだ何も知らないので半年の期間は有り難く頂戴致します」

「うんうん、やはり君はとても賢いね。もしオルベルに何かされそうになったらすぐに報告してね。即刻離婚させて島へ帰してあげるからね」

「てめっ‥」


ちょーーい!!オルベル様!それ以上は不敬の極みです!

私はオルベル様の腕をちょっと引っ張って、できるだけ小声で、


「結婚しますから、落ち着いて下さい」

「なっ‥」

「それにちゃんとお互い知っていくのは大事でしょう?夫婦になるんだし‥」


だからちょっと落ち着いてくれ!

するとオルベル様は目をまん丸にしたかと思うと、プイッと横を向いた。‥けど、尖った耳の先が赤い。



あ、もしかして照れてます?

でもどの辺で???

何か照れるような言葉言ったっけ?なんて思っていると、ヴェリ様がブーッと吹き出して、



「すっごく面白い!オルベルが転がされてる!!」

「‥笑うな!おい、帰るぞ」

「え、も、もういいんですか?」

「許可は貰った」



そういうと、オルベル様は私の手を引っ張って回れ右をしたけど、お、お辞儀くらいさせて〜!?慌てて後ろを振り返り、小さく頭を下げるとヴェリ様はそれはニコニコ笑って、私に手を振ってくれた。うん、優しい王様で良かった‥。





今日も読んで頂きありがとうございます!


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