8番目とゴースト。63
かなり大きなお化けがいたけれど、あっさりベル様によって追い払われ、無事に(?)夕食を食べ、お風呂はレーラさんが入り口で飴を大量に持って待機しててくれた‥。もう本当に何から何までありがとうございます!!
感謝をしつつも、お風呂にビクビクしながら入ったけれど、お化けは確かに入って来なかった。
ホッとしつつも、お風呂場の小さな窓から湖の向こうに見える町がいつもより明るい。お祭りだから‥もあるだろうけど、きっと怖い子もいるから‥と、思いたい。
「やっぱりこの世界は地球と全然違うんだなぁ」
前世の地球はお盆はあったけど、本当にお化けの姿になって現れるなんてあり得なかった。そう考えると、私はやっぱり生まれ変わって、全然違う世界にいるんだなぁとしみじみと痛感する。前世の記憶も、本当に僅かしかなくて、確かこうだった、ああだった‥と、曖昧になっている。その内、その記憶も消えていくのかな。
なんとなく不思議な感覚になりつつもお風呂場から上がって、急いで身支度をすると、入り口で待っていたレーラさんがにっこり笑って、
「ゆっくり暖まれました?いざとなったら吹き飛ばしますから安心して下さいね」
「は、はい‥」
この地方に住んでいる方達だから、吹き飛ばすのは申し訳ないような??そう思いつつも、しっかりと拒否はできない。だって怖いんだもん。部屋へ戻って髪を乾かし、あとは寝るだけ!に、なったタイミングで部屋のドアがノックされた。
「リニ、大丈夫か?」
「はい!レーラさんが居てくれたので」
「そうか。レーラ、あとは大丈夫だ」
「承知致しました。それではリニ様お休みなさいませ。何かありましたら飴を投げるなり、物を投げるなりして下さいね」
「‥はい」
飴は投げるけど、物はどうかな?
面白そうに微笑みながら部屋を後にしたレーラさんを見送ってから、顔を上げればベル様も白いシャツに黒いパンツ姿で、随分とリラックスした格好になっている。
「その、もう、寝るか?」
「え、ええっと、そうですね。あ、でもシュナさんに貸して頂いた本を少しだけ読んでからでもいいですか?」
「構わない。ああ、でもソファーだと体が冷える。ベッドに入って読むといい。俺も椅子を持ってくる」
「あ、ありがとうございます‥‥」
テキパキと椅子をベッドの横に置いたベル様、流石軍団長だ。仕事が早い。
私は本を数冊抱えて、ベッドの中へちょこっと座らせて貰うと、膝上にふわふわの掛け布団が掛けてあるのに落ち着いたピンクのブランケットをご丁寧に更にベル様が掛けてくれた。い、至れり尽くせりだな。
「ご丁寧にありがとうございます‥」
思わず深々とお辞儀をすると、ベル様は目を丸くし、それから可笑しそうに小さく笑った。
「リニは、大人のように礼を言うんだな」
「‥それはまぁ、そうですね。一応大人なので」
「大人でも礼を言えない人間は多くいる」
「‥魔族でもそうなんですねぇ」
「魔族だからこそかもしれないな」
しみじみと話すベル様‥、苦労しているのかな。
確かに王城に行った時も、ものすごく敵意剥き出しの視線を送られたもんなぁ。ベル様なんて軍団長だし、ヴェリ様やリリオン様と普通にタメ口聞いていたから余計にやっかまれるんだろう。本人何も悪くないと思うんだけどなぁ〜なんて考えていると、
「明日、」
「え?」
「明日の夕方、湖の向こうの町へ行ってみないか?」
「町へ?」
「一番近い町だが、まだ行ってないから。それに祭も楽しいはずだ」
「な、なるほど‥」
町ではお化けを出迎えてお祭りをするんだもんね。
楽しい‥か?とも思うけれど、せっかくの提案だ。あとベル様がいれば大丈夫だろう。私は小さく頷いて、
「行ってみたいです!」
「そうか‥!」
パッとまたも顔を輝かせたベル様。
しかし、眉間のシワも同時に滞在中だ。嬉しいのかい?嬉しくないのかい?どっちなんだい?!と、心の中で誰かが叫んだ気がした。
「では明日、仕事を終えたらすぐに戻るから町へ行ってみよう」
「はい。楽しみにしてますね」
「‥‥楽しみ!」
まるで「楽しみ」という言葉を初めて聞いたように驚きの表情をしたベル様。
この人、本当に面白いなぁ。でも軍団長だからそんな気軽に今まで遊んでいなかったのかもしれない。それならば、まだ人間18年しかやってないけど、遊ぶことなら得意な私。一緒に心ゆくまで楽しもうではないか!
「お祭り、どんな風にしているか知らないけれど、遊ぶのは得意なので楽しみましょう!あ、でもお仕事があればそっちを優先して下さいね」
「いや、祭りが最優先だ」
「そ、そうなんですか‥」
ものすっごい真剣な顔で宣言されてしまった‥。
もしかしたら、実はものすごく遊びたかったのかもしれない。そう考え、ひとまず借りた本を読むことにした。うっかりお化けが出ても、ベル様がいれば安心だしね。
今日も読んで頂きありがとうございます!!




