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8番目とゴースト。62


中庭の畑へ一緒に水やりをして、湖の方を見れば白いお化けがふわふわ飛んでいるのが見えた。


う、うん、距離!距離さえあれば大丈夫そうだ。

ドキドキしつつポケットに手を入れて、何かあれば飴を投げられるようにしているが、ベル様がそれよりも先にお化けが出てきた瞬間に、ものすごい勢いでぶん投げてくれるので大変助かる。



「お化けって、結局のところこの地方に住んでいた方達、ですよね?」

「ああ、大体がそうだな」

「違うパターンもあるんですか?」

「遊びに来る‥というのもいるらしいな」

「ああ〜〜〜、それはわかります。私もお化けになったら普段行ったことのない場所には行ってみたいと思ってます」



そう話すと、ベル様が私の手を急いでギュッと握って、「まだ早いぞ?」と、慌てて言ったけれど、まだ死なないってば。でもまぁ長寿の魔族から比べたら私の命なんて一瞬なんだろうな。心配そうに私を見つめるベル様に、


「心配しなくてもあと80年くらいは生きますよ!」


と、宣言するもますます心配そうな顔をされた。


‥一体どうしたら安心できるんだろう。

ああ、でもこの感覚なんとなく覚えがあるな。私が自分の父や母が自分よりも早く天へ帰ってしまうんだと知った時、「ずっとずっと生きててね!」と、お願いした。そんな感じなのかもしれない。あの時、お父さんやお母さんはなんて言ってくれたっけな‥。思い出しながらベル様を見上げ、



「ずっといますよ。ちゃんとそばにいます」

「え、」



あ、そうだった。

そう言われたんだ。私はニコッと笑って、


「私も父や母が先に死んじゃうって知った時、二人ともそう言ってくれたんです。ずっといるよって。あの一言を貰って、私すごく安心したんです」

「‥‥そう、なのか」

「はい!だから安心して下さい!ずっといます」


私の言葉にベル様は目を丸くし、そしてぐっと口を引き締めた。

え、ええっと、なんで???

もしやまたもや私は何かをやっちまったのか?オロオロしていると、ベル様は私の手をそっと握り返し、少し声を震わせながら、



「‥‥‥ずっと、いてくれ」



なんだか泣きそうな顔をするので、条件反射のようにブンブンと首を縦に振ると、ベル様はようやくホッとしたような顔になった。‥なんというか、ベル様は私よりずっと大人なのにたまに子供のような反応をするなぁ。どこか不思議に思いつつも、そんな風に話すベル様にちょっとドキドキしてしまう。本当に私が大切な存在のように言うんだもん。


だからか「ずっといて欲しい」なんて言われたことが、今になって時間差でじわじわとやってきて、照れ臭くてベル様をうまく見られない‥。


「そろそろ部屋へ戻るか」

「は、はい!」

「風呂場にはレーラが入り口で待機してくれるそうだから安心してくれ」

「ありがとうございます‥‥」


ううっ、お化けが怖くてお風呂に入るのも躊躇う私の気持ち、筒抜か?いや、さっき確認したから筒抜だな。思わず赤面する私をベル様がじっと見つめるので、ますます赤くなる。ちょ、あまり見ないで欲しいんですが‥。


「リニ、顔が赤いが大丈夫か?」

「大丈夫です。もうちょっとすれば落ち着くと思います」

「そうか?」


そうです!ちょっと急ぎ足で室内へ入れば、なんだか目がチカチカするくらい室内が明るい!あれ?!こんなにこのお屋敷明るかったっけ?


目を丸くすると、ベル様が小さく笑って、



「部屋を明るくしておけば、突然お化けが出ても怖くないだろう?」

「まさかの照明まで!!あ、ありがとうございます!!」

「暗い中で浮かび上がると怖いだろうしな。俺も子供の頃は怖かった」

「え!?そうなんですか?」

「魔族でも子供の時は、やはり不気味に見えるからな」

「子供‥‥。い、いや、そうですよね?やっぱり怖いものですよね」



暗に私が子供‥と、言われてる?なんて思ったけど、魔族にしてみれば私は赤ちゃんという枠なので、大いに子供でいようではないか!


「ん?じゃあ、ベ、アヴィ様も小さい頃は飴を投げていたんですか?」

「‥‥その頃は、飴もなかったからベッドに隠れていたな」

「それは大変でしたね」


小さい時は怖いよね〜。

とはいえベル様も怖かったなんて言ってくれたので、ちょっと大手を振って怖がれる。



「アヴィ様は、もう怖くはないですか?」



私の問いにベル様は一瞬、言葉に詰まり、それから眉を下げて小さく笑った。


「今はな。リニもいる」

「私、怖がってますけど??」

「‥‥こうして、手を繋いでくれるからな、安心だ」

「なるほど‥」


小さい時は手を繋いでくれる人がいなかったの‥?

あれ?でも王弟のリリオン様に育てられたって聞いたから、一人ではなかったはず‥。ってことは、拾われる前の話をしている?と、突然窓から一際大きなお化けが現れてギョッとした。



「お、大きい!?」

「かなり大きいな‥」



そう言いつつしっしと手で払うベル様。

‥うーん、魔族ってやっぱり強いわ。





お化け屋敷に一人では入れません。大人になってもです。


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