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8番目とゴースト。60


早く時間が過ぎないかなぁと思う時ほど、時間はゆったりとしたもので‥。


せっかちな私はお茶を飲み終えると、中庭へ散歩がてら畑に行くことにした。朝の水やりはベル様にお願いしちゃったから、どれだけ成長したかもチェックしたい。水やりは、もちろんやらずにいるけどね。レーラさんと一緒に中庭に出れば、テラスの向こうに広がる湖からの風を受けて、ホッと息を吐いた。



「‥なんだかこの風景を見て安心してしまいます」

「うふふ、それは良かったです!どんどんここが居心地良い場所になってくれたら嬉しいです」

「はい‥。って、あの対岸の町がいつもと違って明るい感じがするんですが、」

「ああ、そろそろお祭りの時期ですからね。十日間くらいずっとするんですよ」

「へぇ〜!お祭り‥」



魔族のお祭りって何をするんだろう。

ちょっとワクワクするなぁ。ベル様と一緒にお祭り行きませんか?ってお誘いしてみるのもありかな?そんな事を考えつつ、中庭の畑へ足を進めると、昨日よりもやっぱり随分と育ってる!


「え、すごい!?随分と伸びてる‥」

「魔法もあるんでしょうが、土も野菜に合っているのかもしれませんね」

「それでもここまで成長するってすごいですよ‥」


ミニトマトなんて、茎が随分と伸びている。

これは支柱を立てて支えてあげないとダメかもな。


「レーラさん、農機具の置いてある場所に支柱って‥」

「これですね!」

「はやっ!もう持ってた!?」

「そろそろご入用かと思って‥」

「すごい‥、優秀の塊だ」


私の言葉に胸を張るレーラさんから支柱を受け取り、土に挿したその時、グニュッとした感触に首を傾げた。


ん?

土の中から変な感触がした?

手で少し土を避けようとしたその時、



にゅうっっと、白いものが地面が飛び出してきた。



「ひゃぁあああああああああああ!!???」



にゅるりと、地面から出てきたそれは前世の絵本で見たまんま白い布を被ったお化けのような形をしていて、薄っすらと青白く光っている!


え、何これ、お化け?!!

宙を浮かぶそれに目を丸くする私に、



「リニ!大丈夫か!!」



目の前が今度は真っ暗になって、私はまた「ひょえぇえええええ!??」と、叫んだが、よくよく見ればベル様が私を後ろから抱きしめているだけ‥、じゃないよ!なんで抱きしめてられているんだ!??


目を見開く私と対象に、ベル様は浮かんでいるまんまお化けを見て、


「ああ、この季節か」


と、ことも投げに言ったが‥。

ちょっと待って!?何、この季節に何があるの?!


「あのっ、そ、そこの浮いているのって‥」

「精霊の魂といって、この季節になると黄泉の国に行っていた魂が帰ってくるんだ」

「た、魂‥」


有り体にいえばお化けですね!?

そして、それって前世でいえばお盆とかそんな感じなのか?

恐る恐るその白い布を被ったようなお化けを見れば、ぬ〜〜っとこちらへやってきて、私の髪に触れようとして‥、



「む、無理〜〜〜〜〜!!!!」



ぎゅっとベル様に抱きついて、目をぎゅうっと閉じた。

ごめんだけど、お化けの類は前世から苦手なんだ!お願いだから帰ってくれ〜〜〜!!


と、頭上でベル様が、


「り、リニ、大丈夫、だぞ。こ、怖くは‥」

「すみません!ごめんなさい!お化けらしいもの全般怖いんです〜〜〜〜!!!」

「そ、そうか、」


困ったように返事をしたベル様は私の背中をトントンと優しく叩きつつ、


「もう大丈夫だ」

「‥‥本当、ですか?」

「ああ、もうあっちへ行かせた」


そう言われて、そろそろと顔をお化けのいた方へ向けると、ふよふよと湖の方へ飛んでいくのが見えてホッと息を吐いた。



「あの、あれって一体‥」

「魂が一時的に大地に帰ってくるんだが、ああやって夕方から夜にかけて思い出の場所を巡るんだ。十日もすれば満足してまた黄泉に帰る」

「十日!!?」

「あ、ああ。だが十日間だけだから‥」

「十日間、夕方から夜にかけてフヨフヨ飛んでいるんですか?!」

「そ、そうだな‥」



そんな!!!お化けが死ぬほど苦手なのに十日間もいるの?

それで私はあの広い部屋で夜一人で寝るの?!部屋に出てくるかもしれないのに?!どうしよう‥泣きたい。そして帰りたい‥。


涙目の私を見て、ベル様はオロオロした様子で、「悪さはしないぞ」と、言うけれどそうじゃない!いるだけで怖いんだってば!私は側で心配そうにこちらを見つめるレーラさんを見上げ、


「レーラさん、夜一緒に寝られませんか?」

「え?!」

「お化け、本当に無理なんです〜!!怖くて寝られません〜〜!」

「まぁまぁまぁまぁ、なんてお可愛い!でも大丈夫ですよ!私でなくてオルベル様がいらっしゃいますからね!ご夫婦で一緒に寝れば何も怖くありませんわ!」


いや、私達結婚したけどあくまで仮免許状態だし、そもそも好きとかそういうのもまだないし‥と、困惑した私を、ベル様がじっとこちら見つめ、



「‥‥‥‥リニが、良ければ側にいる」



と、申し出てくれたけど、流石に恋心も何もない男性と一緒にはちょっと‥。

涙目で「一人で頑張ります」と、言うと、ベル様はそれはショックを受けたように固まった。いやだってねぇ?流石にダメでしょ。





お化け屋敷って怖いですよねぇ‥。

(私は怖いです)

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