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8番目、ホッと一息。59


お茶を飲んでからすぐ私達はお屋敷に戻った。


パッと一瞬で自分の家に戻れるなんて本当に便利だなぁ〜〜。感動していると、レーラさんがニコニコでこちらへ駆け寄ってきた。


「お二人ともお帰りなさいませ!呪いは解けましたか?」

「‥‥いや」

「ある意味逃げられた感じでしたね」

「あら〜〜、そうでしたか。まぁ確かにちょっと面白‥。こほん、次回からこういった事態がないように新たに呪いを掛けられないようにしますか?」

「そこは大丈夫だ。もう掛けておいた」

「え!?いつの間に!??」


しれっとベル様が言ったけど、それっていつですか??

目を丸くしてベル様を見上げれば、「呪いを掛けられてすぐ」と、答えたから私はもうなんて言ったらいいのかわからず、口をパクパクと開けるだけの人間になった‥。


待って?せめて一言いって?びっくりするから‥。


ベル様は真剣な顔をして、


「呪いはもう大丈夫だから安心してくれ」

「あの、怖いことって、もう、ないですよね?」


思わず尋ねちゃったよ!だって怖いって〜〜!!

するとベル様は、うっと言葉に詰まった。


「あるんですか!?怖いこと??!!」

「い、いや、その人間がどれが怖くて、どれがダメなのかよくわかってないから‥」

「な、なるほど‥。ううっ、じゃあ小出しでお願いします?」

「いや恐ろしいと思うことがないようにこちらが気をつける」

「ぜひお願いします!!」


なにせヴェリ様に「まだ一緒に居たい」と言ったばかりなのに、やっぱり怖いから帰る!なんて言えないしね。レーラさんはそんな私とベル様を交互に見て楽しそうに笑うと、



「じゃあ、リニ様。お疲れでしょうし、一度着替えてましょう。オルベル様も着替えたらお仕事が山のように溜まってますからね、チャチャッとやってきて下さい!」

「‥‥わかった」



うんざりしたような顔をしたベル様を見上げて、


「あの、お仕事、もしお手伝いできそうなのがあれば、何か手伝いましょうか?」

「え、」

「まだ夕方の野菜の水やりには時間がありますし‥」

「いや、リニは疲れては‥」

「あ、体力は結構ある方なので大丈夫です!」


というか、私だけ休ませてもらって、ベル様がずっと働きっぱなしもなんとなく悪いなぁ〜って‥。って、考え過ぎかな?するとベル様は眉を下げて、


「人間は、すぐ疲れてしまう聞いている。遠慮なく休んでくれ。仕事はフィプスも手伝ってくれるから大丈夫だ」

「はい‥」


確かに絶対的に魔族と人間で体力を比べたら魔族に軍杯が上がるもんな。

渋々と頷くと、ベル様は黒いマントを翻し、自分の部屋の方へと戻っていった。私も魔族だったらなぁ〜って思うけれど、人間として今世は生まれてきたんだ。そこはまぁ仕方ない。


「さ、リニ様。お部屋に戻りましょう」

「あ、はい」


レーラさんに促されて部屋へ戻ってドレスからいつものようなワンピース姿に戻ると、体から一気に力が抜けた。



「は〜〜〜〜〜〜、やっぱり疲れているものですね‥」

「それはそうですよ。王城へ行くだけでも疲れると思います。私も緊張しちゃって、帰ってくるとグッタリします」

「え?レーラさんも?」

「魔族でもあそこは緊張しますからね。オルベル様は本当によくお仕事されていると思いますよ」

「そう、ですね」



確かに。

あちこちで悪く言われる私を庇ったり、シュナさんの為に戦ったり、ヴェリ様と普通に話していたり、本当にすごい。それで帰ったら仕事?私も結構働き者だと自負していたけれど、全然まだまだだな。小さくため息を吐く私にお茶を淹れてくれたレーラさんは面白そうに笑って、


「でも王城から帰ってきて、お二人が少し距離が縮まったようで嬉しいです」

「そうですか?」

「はい。オルベル様は本当に口下手ですし、不器用を絵に描いたような方ですから」

「‥‥あと、嘘をつけない方かな?」

「そうなんですよ!!!だから貴族に目の敵にされるんですよね」


ああ、それはなんとなくわかる。

レーラさんから温かいお茶を受け取って中を見れば、茶色の液体の中に小さな金平糖のようなものが仄かに光っている?



「え、光ってる‥?」

「ああ、それは甘い金平糖なんですが、お茶の中に入れると星のように光るんです。可愛いでしょう?」

「はいっ!すごく可愛いです!」

「ふふっ、オルベル様が可愛いものがあった方が嬉しいんじゃないかって仰られて‥。それで早速入れてみたんです。喜んで頂けて良かったです!」

「べ、アヴィ様が‥」



もう一度お茶の中を見れば、ふわふわと光る金平糖が星のように光っている。



‥なんだかベル様のようだな。

お星様の名前を持つベル様。不器用で照れ屋で、ほんのり光る星のように優しい。そう思ったら甘いお茶が、じんわりと胸の中まで暖めてくれるような気がした。そうしてもう一度、お星様のように光る金平糖をカップの中で小さく揺らしながら、早く夕方にならないかなぁなんて思ったのだった。





今日も読んで頂きありがとうございます!

寒さがじわじわやってきましたね〜〜。温かいお茶が美味しい季節です。

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