8番目、いざ戦いへ(?)53
物語の王子様のように格好良い先代王弟のリリオン様。
と、いう事はヴェリ王様の叔父さんって事、だよね?
その割には若々しい!やっぱり魔族だから?綺麗な長い金髪が肩からさらりと流れ、着ている紺色のスーツも相待って、ますます王子‥いや、王弟だから王子様で合ってる、のか?
マントの中からベル様を見上げれば、それはもう嫌そうな顔をしてリリオン様を見ている‥。まぁ、呪いの元凶なら嫌がるか。
「というか、僕は呪いをオルベルに掛かるようにしたのに、なんでお嫁ちゃんになってるんだい?」
「‥ちょっとした不手際だ。さっさと解け」
「ええ〜〜?せっかくお嫁ちゃんと更に仲良くなれるようにしたのに?」
「どう考えても仲違いさせようとしているとしか思えないが?!」
ベル様の眉がどんどん釣り上がる一方で、リリオン様は可笑しそうに笑っている。‥でも、なんていうか馬鹿にしたような笑いではない気がする。意地悪する人って、笑ってても目が笑ってないし。
ちょっとドキドキしたけれど、ベル様のマントからそっと出ると、ベル様が慌てたように私の方を見るけれど大丈夫だって。私だってこれまで嫌な視線をかわしてきたんだぞ?ベル様の腕を小さくポンポンと「大丈夫」と、ばかりに叩いてから、真っ直ぐに前を向くと、リリオン様はどこかワクワクした顔で私を見つめた。
そっとスカートを摘んで、ゆっくり頭を下げると、
「先代王弟のリリオンだ。と、いっても今はしがない研究者だがな。リニ・プレファンヌ嬢、遠くからようこそ。どうだい、この国は。驚くことばかりだろう?」
「お初にお目にかかります。日はまだ浅いものの、とても素晴らしい国で毎日感動しております」
「そうかい?オルベルは、君一人さえも守れないようだが?」
おっと〜〜〜?
呪いを掛けておいて、そんな言い方しちゃう?
周囲にいた人達が、ベル様の体からピリッとした空気に一瞬黙り込み、こちらを様子を伺うようにチラチラ見ている。
こらこらこらこら!!そっちが呪いを元はいえば掛けてきたから、こうなってるんでしょうが〜〜!と、ツッコミたかったが、王城で王弟にんな事言える訳がない。私は喧嘩を吹っかけてきたくせに、ワクワクした顔で見ているリリオン様を見て、こりゃ絶対楽しんでいるな‥と、確信した。
ベル様が何かを言おうとして、リリオン様に一歩足を近付けたのを見て、咄嗟にベル様のマントを掴んだ。待ったーーー!!喧嘩はダメ!絶対!!ベル様を見上げて、首を小さく横に振ってから今度はリリオン様に微笑みかける。
「リリオン様、私は何かあっても駆けつけてくれるアヴィ様がいて大変心強いんです。」
「‥‥ほう?魔族相手は怖くないのかい?」
「怖い?アヴィ様が?」
私の言葉にリリオン様が可笑しそうに笑って、ベル様のほうを見て、
「愛しいお星様と呼ばれるなんて、随分と仲が良いんだな」
「っへ?」
愛しいお星様?
アヴィオールってそういう意味だったの??
思わず小説の内容を知っているシュナさんをチラッと見ると、にっこり微笑み、
「愛しい人をそういう風に呼び合う場面があるんですけど、すっごく素敵ですよね!」
と、丁寧に教えてくれた‥。
待って?!じゃあ私は公衆の面前で「私の愛しいお星様」って、めっちゃ惚気ちゃってたわけ?!いや、それ以前に私、ずーーーーっと家でそう呼んでたよ!一気に顔が赤くなって、
「仲良く、させて頂いてますね‥」
小声でそう言うと、リリオン様はそれは楽しそうに笑うと、ベル様の肩をポンポンと叩き、耳元でそっと、
「人間との結婚なんて大丈夫かと心配したが、まぁなんとかなっているようで安心したよ」
と、囁いた。
途端、ベル様の眉間のシワが少し薄まった。
やっぱりこの人、ベル様を心配してたんだ。リリオン様は私をチラッと見ると、小さくウィンクして、
「じゃあ、あとでな」
颯爽と去っていこうとするリリオン様の肩をガッと掴んだベル様。
できる限り友好的な感じの空気を放ちつつ、小声で、
「待て!その前に呪いを解け」
「それこそキス一つで終わるだろ。結婚してるくせに呪いが解けてないから、喧嘩しているか、やっぱり仲違いしているのかと心配しちゃったぞ」
「余計なお世話だ!いいから呪いを解け!!」
うん‥、ベル様ってば王弟相手にすごく気安い感じだ。
貴族でもないのに、こんな風に口が聞けちゃうって事は、よっぽど仲良しなのかな?二人で押し問答している間に、エクレア‥ならぬエクリア様達はコソコソと逃げ出すのを見て、私とシュナさんは顔を見合わせて笑ってしまった。
うん、まぁともかくなんとかなって良かった‥?
今日も読んで頂きありがとうございます!!




