8番目、呪われる!43
なんとも面倒な呪いに掛かった上に、王家のパーティーの招待状が届いた。
小さなお茶会‥と、書かれてあったけれど、それを見たベル様はうんざりした顔をして、
「‥あいつの嫁候補の選定か」
と、呟いた。
「あいつ‥と、いうとヴェリ様ですか?」
「ああ。通常はもっと若い時に決めるんだが、先代の王が大恋愛をして結婚をしたんで、自分が好きな相手と結婚しろと言って何も決めてなかったんだ」
「へえ〜〜〜〜!」
それでお嫁さん候補を見つけるパーティーを開催とな!
って、そんな場所へ私とベル様が行っていいものなの?ベル様を見上げると、
「‥結婚した事を周囲に知らせておけと、いう事なんだろう」
「なる、嫌い!!‥し、失礼っしました」
「‥‥大丈夫だ」
こんな状態なのに出席していいの?!!
結婚したのに「嫌い!」と、叫ぶ妻(仮)‥。どう見ても印象最悪だよね?できる限りベル様を薄目で見て、「嫌い」という言葉を言わないようにしないとだな。
「と、とにかく気をつけます!」
「俺も呪いを解く方法を見つけておく」
「すみません‥、何から何まで」
呪いに掛かっちゃうし、心配かけてばっかりだな‥。
気持ちが落ち込みそうになった私に、ベル様がこちらをチラッと見て、
「本は、どうだった?」
「あ、人間の本ですか?それならここに‥」
「それも、だが‥、その送った本は」
「そうでした!あんなに沢山の本をありがとうございます!全部、中身はまだ確認してないんですが、これから読ませて頂きますね」
笑顔で感謝を伝えると、ベル様はパッと横を向いたが耳が赤い。
お礼を言われただで照れてしまうなんて、控えめな夫(仮)だな。
「人間について、私も改めて歴史について勉強をしたんですが、知らなかったこともあって‥。やはり幾つになっても勉強って大事ですね」
「そ、そうか」
「魔族の皆さんのことも、もっと勉強していきますね!」
「‥根を詰めるなよ」
いや〜〜〜、そうは言ってもお茶で酔っ払ってしまっては困るので!
そこはしっかり学んでおきますよ。ともかくお互いあまり見ないようにすれば話はできるから、一安心だ。静かにお茶を飲むベル様を見て、
「そう言えばアヴィ様は午後はお仕事ですよね?」
「ぶはっ!ゲホッ、ゴホッ!!」
「わーーー!!!ベルさ、嫌い!!!だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫、だっ!」
そうは言ってもお茶をめちゃめちゃむせてるじゃないか!慌てて背中をさすったら、ベル様はカチッと体を固めてしまって、また驚いた。ど、どうして?背中をさするのもアウトなの?!レーラさんを見上げると、にっこり微笑みながら綺麗なナプキンをそっとベル様に手渡し、
「大丈夫ですよ。持病の癪だと思っておけば」
「そ、そんな感じでいいんですか?」
「オルベル様?リニ様が驚いてしまってますよ。ほら、いつもの感じにお戻り下さい」
「わ、わかってる‥!」
むせたからか、顔も若干赤いけど本当に大丈夫かな?
でもあんまりまじまじと見ると、「嫌い!」って言いそうだから、首元に視線を動かそう。
「こんなにご迷惑をお掛けしてしまうなら、あまり顔を合わせない方が‥」
「それは、ダメだ!」
「え、で、でも‥」
「しゅ、周囲に誤解される心配もある!」
「あ‥、それはそう、ですね。でも家にいる時くらいは‥」
「いやっ!慣れておくことも大切だ!」
そ、そう?
そんだけむせてたけど、家でも頑張る感じ?
心配でついつい背中をさすると、ベル様の耳が先まで赤くなっている。だ、大丈夫、だよね?しかしこんなに耳が赤くなるのってちょっと面白いなぁ。
「あのっ」
「なんだ?」
「耳、触ってみてもいいですか?」
「耳‥‥?」
不思議そうに私を見つめたベル様が、小さく頷いてくれたので、そっと背中から耳に手を移動させる。は〜、本当に耳の先が尖っている。至近距離で見つめる耳の先を指でちょんと触れると、ベル様の体が小さく跳ねたが、「だ、だいじょっぶだ」って、言ったけど本当か?
「‥耳の形、私とやっぱり違うんですねぇ」
「そ、そうだな?!」
「音の聞こえ方とか、やっぱり違うんですかねぇ」
「そ、そうだな!?」
耳にピアスしたら尖った先は普通に痛むのだろうか。
指でそっと触れていると、なんかさっきより耳が赤い気がする‥。と、何か視線を感じて顔を上げると、レーラさんとフィプスさんが生温かい目でこちらを見て、
「新婚さんっていいものですねぇ」
「そうですね。とても楽しそうですね」
と、言うものだから慌てて手を勢いよく上げた。
そ、そっか!!仮にも新婚だったっけね!イチャイチャしているって思われちゃうね!?ベル様に慌てて、「あのっ、いきなり触ってしまってすみません!」と、謝ると、ベル様は油の切れたロボットのように、ギリギリと首を横に振ってくれた‥。
新婚さんっていいですよね‥うふふ。




