8番目、呪われる!42
ベル様の名前、及び伴りょ、パートナー、夫などなど全部(仮)なのだが、ともかくその辺を言うと、「嫌い!!」と言ってしまう、大変意地の悪い呪いに掛かってしまった私。
ベル様を見るだけでも、口がムズムズして言いそうになってしまうから、本当にタチが悪い。
「この呪いを考えた人は、相当性格が悪いですね!」
なるべくベル様を見ないようにしつつ、お昼を中庭で食べると、ベル様もこちらをあまり見ないようにしつつ頷いてくれた。これ、本当にラブラブ(?!)な新婚さんにやったらとんでもない事になってたよ?!私達はまだ出会ってようやく4日目だから良かったものの、本当に困ったもんだ。
「それにしても名前が呼べないのは大変ですよね‥。あ!閣下とか格好良くないですか?」
軍団長だし、団長でもいいかな〜?とか思ったけど、小説でそんな風に呼ぶのを読んだことあるんだけど、どうかな?格好いいよね?口をしっかり手で塞いでからベル様を見れば、なんとも複雑そうな顔をして、
「‥‥‥上司と部下のようだな」
ポツリと呟いた。
ダメか‥、格好いいと思ったけどダメか。
そうなるとなんて呼べばいいかな‥。うちの家族は普通に呼び合ってたしなぁ。
「うーーーーーん、じゃあ炎‥、いや安直かな?」
「リニ‥?」
「カラス‥は、ちょっと不吉っぽいし、赤いイメージならトマト、パプリカ、いやそれは野菜だし、明るいイメージ‥」
あ、お日様はどうだろう!
ベル様を見て、
「私のお日様ってどうでしょうか?」
「え?」
「大事な人って意味なんですけど‥。ほら、お野菜を作るにはお日様がなくてはならないし良いと思うんですけど!」
結構良いアイデアだと思うんだけど、どうかな?
それに今そう呼んでも呪いの判定的に引っかからなかったからオッケーだと思う。待てよ?ということは、呼び方を何かに例えたらいける感じなのかも。
「えっと、私の小鳥ちゃんとか、可愛い人とか、あ!私の光っていうのもイケるかもしれません!」
ワクワクした顔で見つめると、ベル様は両手で顔を覆っていた‥。
あ、あれ!?やっぱりダメだった?そういうの魔族的にアウト?
「す、すみません!そんな呼ばれ方は嫌でしたか?ええっと、やっぱり嫌っ‥い、じゃなくて!ええっと、なんて呼べばいいでしょうか」
「い、いや、大丈夫だ‥。少し、驚いただけだ」
「そう、なんですか?魔族的にはやはりアウトでしたか?」
「いや大丈夫だ。少し、強力なだけで‥」
「強力‥‥ですか」
どの辺が強力だったのだろう?
普通に呼び方を考えただけなのに‥。そばで聞いていたフィプスさんとレーラさんを見れば二人は何かを堪えるように口元を引き締めていた。‥何が強力だったのか聞きたかったんだけど、もしかして私はまた何かやらかしてしまったのか?冷や汗が流れたが、ベル様の驚いただけという言葉を信じよう。
とはいえ、もうちょっとマイルドが良いのか。
腕を組んで考え込んでいると、ベル様が私をチラッと見て、
「星‥」
「え?」
「俺の名前は、アヴィオールという星が由来だ」
「へえ、素敵ですね!」
そうだったんだ!確かに黒と赤の瞳しているし、星と言われてしっくりくる。
「じゃあアヴィオールなら大丈夫、ですかね?」
ベル様を見上げてそう呼んでみれば、違う名前だからかセーフらしい!
呪いって結構細かいように思って意外とゆるい?ともかく「嫌い!」と、言わなくて済みそうでホッとした。良かった〜〜、流石に名前を呼ぶたびに「嫌い」って言ってしまったら申し訳ないもんね。そうと決まれば早速呼ぶぞ!
「アヴィオール様!」
「オールは、要らない‥」
「そうなんですか?えっと、じゃあアヴィ様!」
そういった瞬間、ベル様はパッタリと地面に倒れた。
「あ、アヴィ様!??フィプスさん!!べルさ、嫌い!!!が、突然倒れてしまいました!やっぱり何か悪い呪いが掛かった可能性とかないですか!?」
「あー、大丈夫ですよ。そこらに落としておいても」
「そ、そうなんですか!?」
「単純に破壊力がすごいだけなんで」
「破壊力!??」
ギョッとした私にレーラさんが優しく微笑みかけ、「デザートは洋ナシのコンポートです!さ、食べましょう」と、綺麗なガラスの器に入れてテーブルに置いてくれたけど、あのっ、ご主人が倒れているけど、これって普通なの?大丈夫なの?
オロオロする私にベル様はゆっくりと起き上がると、
「大丈夫だ‥」
「ほ、本当ですか?本当に大丈夫ですか?」
「‥‥少しずつ、慣れる」
「慣れる」
一体何を慣れるのであろうか‥。
私も魔族の風習や考え方に慣れる日が来るのかなぁ〜と、ちょっと遠くを見つめつつ美味しい洋梨のコンポートを食べたのであった。
うっかり寝こけてしまった‥。
深夜だけど更新してからお休みなさい。




