8番目、呪われる!41
島にいるお父さん、お母さんお元気でしょうか?
私は今、魔族の嫌がらせ(?)で、呪いに掛かってまーす!‥なんて、絶対書けない事態になった。フィプスさんとレーラさん、そしてさっきまで固まっていたベル様の3人が私をじいっと見つめた。
「‥貴族どもの呪いか」
「申し訳ありません!手紙を落としてしまったばっかりに‥」
「いや、そもそも呪いを掛けた奴らが悪い。幸い、言葉だけに限定された呪いだ」
「困りましたねぇ、呪いを解くにもちょっと面倒な術式ですし‥」
と、3人が私を見つめつつ言うのだが、ええと、ちょっと注目度が高くてそわそわしてしまうんだが‥。私はできるだけベル様を見ないように、首の辺りに視線を移す。
「ええと、もう一度確認してもよろしいでしょうか?つまり、私は貴族のどなたからの呪いによって、ベル様‥嫌いです!!あ、げ、限定で悪口を言ってしまう呪いに掛かって、しかもその呪いが解けにくいもの、なんですね?」
うっかりベル様の名前を言おうものなら、「嫌いです」がセットになるってどないやねん!しゃっくりかいな!?口を手で抑えると、またも固まってしまったベル様をチラッと見たフィプスさんが眉を下げた。
「おそらくオルベル様とリニ様を別れさせようとして、呪いをどちらかに掛けて、仲違いさせようとしたんでしょう。とはいえ、屋敷の中へそんな類が入ろうものなら弾かれるんですが、手紙を受け取った直後だったから防げなくて‥。完全に私の落ち度です。本当に申し訳ありません」
申し訳なそうに謝るフィプスさんだけど、ベル様も言ってたけど呪いを掛けた人が一番悪いと思う。私は口に手を当てたまま、首をブンブンと横に振り、
「フィプスさんのせいではないですよ。私もうっかりしてましたし‥。ともかく嫌いではないですし!えっと、私の伴侶の‥嫌いです!!って、ああもうっ!伴侶も、っつき、嫌いです!だめか〜〜〜!!」
しゃっくりのように嫌いですを連発して口をまたも抑えた私。
側から見たら完全にコントだな?って思う‥。
レーラさんが慌てて横を向いたけど、肩がブルブル震えてるのが見えた。うん、まぁ、笑っちゃうよね‥。でも、その横にいるベル様はそれどころではなさそうなくらい、落ち込んでいる。
少しだけ顔を上げたベル様は、
「‥‥‥フィプス、手紙のリストアップをしておいてくれ」
「すぐに!」
フィプスさんは返事をするや否や、パッと目の前から消えた。
非常事態だっけ?‥いや、非常事態か!
ベル様を見上げれば、仕事から帰ってきたばかりなのにどこか疲れた顔をしていて、本来ならお疲れ様と言いたいのに、見ているだけで「嫌い」と言いそうになるので、慌ててまた首元に視線を戻した。
うーーん、名前を呼べないのは難しいな。どうやって呼べばいいんだろう。伴りょとか、夫とか、名前もダメそうだし、黒髪の人、とか?仮にも夫(仮)なのに、それはちょっと悲しいよねぇ。と、レーラさんが申し訳なさそうな顔をして私を見てから、薄いピンクの便箋を取り出した。
「オルベル様、こんな時なのですが実はパーティーの招待状が届いております」
「欠席で」
「残念なことに王家のパーティーです。しかもまさかの明後日です」
「あいつ‥!」
ベル様がちっと舌打ちをしてピンクの便箋を睨んだ。
王家のパーティーって、もしかして結婚の報告をしたヴェリ王様のパーティー?そりゃ確かに王家のパーティーは基本全員出席だけど、このタイミングってまずいよね?
ベル様の方をそっと見れば、ぱちっと目が合って、瞬間「嫌い!!」と、叫び出しそうになる口を手で押し付けてぐっと堪えると、ベル様がそれはもう寂しそうに目を伏せた。
ああ〜〜〜!!そんな顔をさせたい訳じゃないのに!
この呪いって本当に困る〜〜!あ、だから呪いなのか。何か!何か安心させてあげたい!そう思って、片手でしっかりと口を塞ぎ、もう片方の手でベル様の服をギュッと掴んだ。
「‥‥リニ?」
ベル様が私の方を見つめ、うっかり「嫌い!」と、言わないように口をぐっと力を込めつつ、「嫌いだと思ってないよ!」と、ばかりににっこりと微笑むと、ベル様の眉間のシワがぎゅうっと深くなった。
いやなんでやねん!
なんでそないなんねん!
そこは笑うとこちゃうの?!
と、謎の関西弁が発動されてしまったが、服を掴んだ私の手にそっと大きな手が触れた。
「‥‥ありがとう」
あ、伝わった?
ちゃんと嫌いって思ってないって‥、ホッと息を吐いた途端、
「嫌いです!!」
我慢していた分、強めの言葉にベル様はまたも固まってしまった。
わぁあああ、ごめんなさい!そして呪い、本当みめっちゃ困るんですけど、まさかこの状態で明後日のパーティーに私達出席することになるの?!
今日も読んで頂きありがとうございます!
寒くなってきたので暖かくしてお過ごし下さいませ〜〜。
(暖かくしてたら寝こけてた‥)




