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8番目、心配される。39


結局私の部屋はユプスさんが割った窓ガラスと、本棚の設置で入れる状態でなくなったので、本を数冊腕に抱えて中庭で本を読むことになった。


フィプスさんが大きな木の下にテーブルと椅子をセッティングしてくれたので、眩しくもないし、最高に寛げそう。お礼を言ってから椅子に座って、人間のことについて書かれた本を私も読んでみたが、ざっくりと人間の歴史から生態、特性について書かれていて、同じ人間なのに勉強になる。



「‥この世界の人間って一番最後に生まれた種族だったんだ」



魔族が一番最初に生まれ、次いでエルフ、ドワーフ、獣人、最後に神が人間を地に送った‥と、書いてあり目を丸くした。ここってそんな世界だったんか!!だって我が家は貧乏な王族だったから、歴史も島国で起きたことが書かれた本しかなかったから初めて知ることばかりで面白い。


やっぱり本って楽しいなぁ。


分厚い茶色の本の表紙をそっと撫で、もう一度本の世界へ戻ろうとすると、



『ギャア!ギャア!!』

「へ?」



空を見れば、赤い大きな鳥のようなものが二匹こちらを真っ直ぐに飛んでくるのが見えたが、サイズ大きくない?!私一人分くらいある大きさなんだけど、これって大丈夫?慌てて椅子から立ち上がって建物の方へ逃げようとすると、空に白い膜のようなものが浮き出た。


「え?」


シュナさんの所で見たのと似ている?

そう思った瞬間に、白い膜に触れた赤い鳥達が、バリバリと稲妻に当たったように光ったかと思うと、ポーーンと屋敷の外へと飛んでいった‥。


「え?え?!」


呆然とする私の方へ、ティーポットのセットをトレイにのせたフィプスさんがこちらへやって来た。



「あ、魔物が来ました?時々貴族達がこっちへああやって寄越すんですよね〜。もうバレバレだってのにまだやるんだから暇な奴らでしょう?」

「え!?魔物を?こっちへ?」

「暇人なんですよ。それに姑息ですよね〜。あ、お茶淹れますね」

「端的に言えば刺客、ですよね?!」

「あれくらいなら他所の家に小石を投げる程度ですね。はい、お茶をどうぞ」



もう一度椅子を勧めてくれて、私はあれが小石レベルなの?と驚きつつも、さっき座っていた椅子に座ると暖かいお茶が入ったカップを渡してくれた。うん、茶色じゃないから酔わない‥よね?そっとお茶を飲み、ほっと息を吐くと、フィプスさんが眉を下げて笑った。


「たまにああいうのさせて、ガス抜きさせてるんですよ」

「ガス抜きっていうレベル、なんでしょうか?」

「まぁ、ここはオルベル様の魔力に守られているし、あんなんじゃ相手にもなりませんからねぇ‥。あ、昨日のユプスは殺意はなかったんで入って来ちゃいましたけど、あれで本当にリニ様に何かしようものならただじゃ済まない仕様にはなってるので安心して下さいね」


魔族‥‥、バイオレンス過ぎるよう!!

私は本当にこの国でやっていけるのだろうか‥と、ちょっと気が遠くなっていると、



「リニ!大丈夫か?」

「っへ?」



後ろを見れば、ベル様がいる!?

あれーーー!?仕事は?驚いて立ち上がると、ベル様が辺りをキョロキョロと見て、


「魔物は始末したか?」


と、即座に確認した。

うーん、とっても魔族。フィプスさんはそんなベル様を見て呆れたように「あんた自分で魔力をこんだけ張っておいてなに言ってるんですか」と、話すけれど、待って?張るって何?魔法だけじゃないの??


事態が飲み込めない私はベル様とフィプスさんを交互に見たけれど、待てよ?周囲にノルチェはいないよね。ってことは、転移で戻って来たの?



「ベル様、何か非常事態があったのですか?」

「え?」

「転移を使うのは差し迫った時だけとお聞きしましたが、」

「まさに今だろ」

「え?」



しっかり魔物は撃退されましたけど?

目を丸くする私をベル様がしっかりとチェックしてから、「怪我はないな?」と言うのでコクコクと頷くと、ほっとしたように私を見つめた。


本当に私を心配して、帰って来てくれたのか‥。


私を心配していると話してくれたけれど、こうやって実際に駆けつけてくれた姿を見て、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「リニ?」


いつもは目を逸らすのに、こういう時はじっと私を見つめるんだなぁと思いつつ、ベル様を見上げた。



「ちょっと嬉しくて‥、心配してくれてありがとうございます」

「そう、か」

「フィプスさんもいますし、安心してお仕事して来て下さいね」



心配かけまいと微笑むと、ベル様が途端にフィプスさんを睨み、それから私を見て、


「‥‥‥‥昼には絶対帰る」

「は、はい。お気をつけて」


私がそういうと、またフィプスさんを睨みながらパッと目の前で消えてしまったけど‥。転移って便利だな。そして何故そこでフィプスさんを睨むんだ?チラッとフィプスさんを見ると、それはもう楽しそうに笑っていて、「いや〜〜、仕事楽し〜〜〜い!」と、しみじみ言った。



‥‥魔族って、不思議な存在だ。





今日も読んでいただきありがとうございます!

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