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8番目のお迎え。3


あれからどれくらい経ったのだろう。

ふと目を覚ませば、なんだか肌寒い。小窓をそっと開ければ、白い大地が見えて目を見開いた。


「雪‥‥!?」


そういえばフィヨルムは北国だ。

うちの島は南の方にあって、季節でいえば春だけど、こっちはまだ雪が積もっているのか‥。それでも魔法でも掛かっているのか、この部屋は暖かい。ただ小窓が少し開いていたので、そこから冷気が入ってきたのだろう。


島では雪は降らないので、前世ぶりの雪景色を懐かしんでいると、またその小窓からフィプスさんが顔を出した。



「あ、起きました?そろそろ着きますよ」

「は、はい!」

「安全運転で行きますけど、一応ちゃんと座ってて下さいね」

「はい!」



元気よく返事をすれば、フィプスさんは小さく笑って窓から顔を引っ込めた。いよいよ着くのか。ドキドキしながら小窓の外を見れば、後ろに高い白い雪を被った山脈が見え、段々とその麓へ降下していく。


「あ、街だ‥」


大きな湖の手前に街があり、その奥に深緑の屋根のお屋敷が見えた。

あれは領主さんの家かな?と、思っていると、グングンとその屋根のお屋敷の方へドラゴンが近付いていく。


え、もしかしてあれがオルベル様の家?

最強の軍団長の家だから、てっきり城塞のような家だと思ったのに、まるでうちのような造りでちょっと驚いていると、ドラゴンは湖のそばにあった芝生の上にふんわりと降り立った。


おお〜〜、飛行機よりも柔らかい着地だ。

感心していると、小屋の扉がぱかっと開いて、



「リニ様、着きました。降りましょう!」



フィプスさんはそういうと、私が持ってきた荷物をさっと持つと手を差し出してくれた。ちょっと照れ臭いけれどその手を握って、ドラゴンからゆっくりと降りると、黒いドラゴンは黄色の目でまた私をギョロリを見た。


「えっと、丁寧に運んでくれてありがとうございました」


ドラゴンにもお礼は大事、だよね?

一応小さくお辞儀をすると、フィプスさんは驚いたように私を見て、


「ドラゴン、怖くないんですね」

「流石にちょっとドキドキはしてますよ?でも、飛んでる間は快適だったし、着地も上手、ですよね?」

「ははっ!よくわかりましたね。そうなんですよ、すごく気が優しいんで連れて来るなら絶対こいつって思ったんです」

「そうなんですね。ええと、この子名前は?」

「ノルチェです。まだ子供なんです」

「可愛い名前ですね。ノルチェ、またね」


黒いドラゴンは黄色の目を丸くして私を見つめた。

か、可愛い。迫力あるなぁ〜って思ってたけど、こんな表情もするんだ。ノルチェに手を振ってから、お屋敷の方へフィプスさんと歩いていくと、小さいお屋敷だと思っていたけれどかなり大きな造りだとようやくわかった。



「お、大きいですね‥」

「いや〜、これでもかなり小さいんですよ。でもまぁ、オルベル様がこれが良いって言うんで‥」

「そう、なんですか」



質実剛健な方、なのかな?

とはいえ、あの大きさはかなりのものだけど‥。

大きな立派な木の門は、フィプスさんが近付くと自動的に開いて私は目を丸くした。


「扉が‥!」

「ああ、ここには認められた奴しか入れない仕様になってるんです。リニ様もちゃんと認められているから、どの部屋も入れますからね」

「そ、そうなんですか‥」


魔族ってすごーい!!

魔法が使えるって聞いてたけど、これもそういう感じで作られているのかな?ワクワクしながら室内へ入ると、水色の髪に水色の瞳のほっそりしたメイド服を着た美人なお姉さんが立っていた。



「お待ちしておりました。リニ様、ようこそお越し下さいました。わたくしお世話させて頂くレーラと申します。どうぞお見知りおき下さい」

「は、初めまして、リニ・プレファンヌです!こちらこそよろしくお願いします」



わ、わ〜〜〜!めちゃくちゃ綺麗な人だ!

かたや私は直前まで家にいたので、いつものちょっと薄汚れたワンピースである。一応王族なんですけどね。フィプスさんは私の荷物をレーラさんに手渡すと、


「じゃあ、俺はオルベル様に報告してきますんで、また後で」

「あ、はい、ありがとうございました」


慌ててお礼を言うと、フィプスさんはにっこり笑って目の前にあった階段をひょいひょいと登っていった。そんなフィプスさんを呆れたように見ていたレーラさん。


「まったく、フィプスは‥。口の聞き方がなってなくて申し訳ありません」

「いえ、とんでもないです。気さくに話しかけてもらったお陰で緊張せずに済みました。ドラゴンも乗り心地がすごく良くて‥」

「まぁ!そうですか!それは良かったです。リニ様はドラゴンは怖くないのですね!オルベル様もとても喜びますわ」

「そ、そうなんですか?」

「はい!オルベル様は、ドラゴンに乗って宙返りをするのがとても好きなので!」

「な、なーるほど‥」


それは怖い。そしてあの巨体に乗って宙返りって何?


私の夫になる人は、かなりのアグレッシブな人なんだな‥。と、15年経って初めて知る真実に少しだけ気が遠くなった。





車で前周りならしたことあるんですけど、心臓に悪いですね。

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