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8番目、うっかり言えない。38


ものすごい速さで出かけてしまったベル様。

ユプスさんもノルチェに乗って出かけてしまったけれど、転移で行かないの?と、思ってフィプスさんに聞いたら「転移は基本火急の事態に使われるものなんです」と、教えてくれた。


そうなんだ‥。

ん?じゃあ結婚の報告は火急の事態だったのか?

まぁ、今更スピード結婚(仮)に何か言っても仕方ないな。


フィプスさんに二階にある書庫を案内してもらえば、初めにちらっとしか見てなかったけれど、中へ入ってじっくり見てみれば、色々な本が置いてある!二人で本棚を見れば、もうため息しか出ない。



「すっごく色々あるんですね!!」

「はい。ヴェリ王がオルベル様に読んでおけと色々送ってくれまして‥」

「王様が?」

「あの二人は幼馴染のようなもので‥。まぁ、その辺も貴族達にやっかまれる原因ですね」

「それだけで?!」



驚いてフィプスさんを見ると、本をいくつか取り出しつつ、


「本当にそうなんですよね。平民とか、そうでないとか、どうでも良いと私も思っているんです」


しみじみとそう言ってから私を見て小さく笑った。

そっか‥、魔族も人間のように色々あるんだなぁ。魔法も使えて、力も強くて、羨ましい!なんて思ったけど、そんな風に人を羨むってどこか人間みたいだ。いや、人間と同じなのか?


「‥ちょっと親近感湧きますけどね」

「親近感?」

「私にとっては皆さんの体力とか、魔法とかとても羨ましくて‥。でも、そういう事をやっかむ気持ちがあるんだって知ってちょっとホッとしてしまって。あ、でも迷惑は迷惑ですけどね」


私の言葉にフィプスさんは目を丸くして、それから可笑しそうに笑った。



「リニ様がここに来てくださって本当に良かったです」

「え?!そうですか?」

「はい。すごく、すごく良かったです」



そんな力強く言ってもらえると嬉しい‥けど、ちょっと照れ臭い。

でも私ノルチェに乗ったら気絶しちゃうし、お茶を飲んだら酔っ払っちゃうけど、それでも良いのかな?まぁ、かといって全て完璧になんでも出来る!とは、思えないけど。


「あ、そうだ。これリニ様好きかもしれません」

「え?」

「恋愛小説です!オルベル様、本当〜に女性相手の対応が下手過ぎて、ヴェリ王に「これでも読んで少しは学べ!」って言われたんです。キルシュナ様も好きな作家さんですよ」

「へぇええ!これが」

「肝心のオルベル様は、最初のページを読んで「どうでも良い」と投げ捨ててしまったんですが、まさに今こそ読んで欲しいですね。なにせ本当に不器用なので!」


不器用。

思わずぶっと吹き出すと、フィプスさんが「内緒ですよ」と、言ったのでもちろんとばかりに頷いておいた。そうしていくつか人間についてよく書かれている資料のような本も見つけたので、部屋へ戻ろうとすると、フィプスさんが書庫部屋をぐるっと見回した。



「書庫部屋ももう少し本を置けるように手配しておいた方が良さそうですね」

「え?もっと?!」

「リニ様が本を好きと聞いたオルベル様ですからね、絶対買い込んできますよ」

「そ、そうですかねぇ?」



流石に今日いきなり買い込んでくるとは思わないけど。

首をかしげる私に、フィプスさんはどこか遠くを見つめながら、「長い時間会えなかった分、相当拗らせてるから」と、呟いたけど、それってベル様のこと?拗らせているようには感じなかったけど‥。



と、思いつつ本を持って自分の部屋へ戻ったら、机の上に山のように積まれた本が目に入って驚いた。



「え?!本が‥増えた?!」

「あ、リニ様〜〜!オルベル様から本が届いたので至急本棚を注文しておきました」

「へ!??」



後ろを振り返れば二人に分裂したレーラさんが両方本を20冊くらい抱えて部屋へやって来て、私は口をあんぐり開けた。本ってお高い物じゃなかったっけ?!思わずフィプスさんをちらっと見ると、静かに頷いた。


「なるべく早く書庫の方は整理しておきます」

「あ、ありがとうございます。あと、ほどほどで良いって私も伝えておきます」

「そうですねぇ。部屋に収まりきれないほどでは困りますしね」


二人で山のように積まれた机の上の本をまじまじと見つめたけれど、ベル様にうっかり何かを好きだというのは気をつけよう。でないと大変な事になりそうだ‥。





これくらいの行動力、私も欲しい‥。

なかなか腰が重いのがあっしです(ーー;

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